占有権-自主占有・他主占有,占有保持・占有保全・占有回収の訴え

占有権 占有権

占有権とは、事実的な支配状態のことで、「その物を、ただ持っているだけの状態」で、占有権という権利が認められます。
例:
・Aが服を着ていれば、Aにはその服の占有権がある。
・Bがスマホを持っていれば、Bにはそのスマホの占有権がある。

このように、民法では、現実に物を支配している事実状態を「占有権がある」として、取引の安全を保護しています。

今回の記事は、この「占有権」についてです。

01 占有権と所有権ってどう違う?

占有権と所有権の違いイメージ図

「占有権」と「所有権」の違いは、たとえば、

・Aは土地の「所有権(本権)」があり、土地の所有権名義人です。
・一方、Bは、勝手に、Aの土地に建物を建てて住んでいます。
Bは土地の所有権はないけれど、土地を占有している状態です。
このように、「現実に土地を支配している状態」なので、「占有権」があります。

土地の所有者Aには「所有権」があり、
土地の不法占拠者Bには「占有権」があります。

02 自主占有と他主占有

同じ「占有状態」でも、所有の意思の有無によって、「自主占有」なのか「他主占有」なのかが違ってきます。

自主占有 所有の意思を持ってする占有のことです。
例:物を買った人,泥棒した犯人
取得時効は成立し得ることがあります。
他主占有 所有の意思のない占有のことです。
例:賃借人
どれだけ年数が経っても、取得時効は成立しません。
自主占有-所有の意思を持ってする占有 例:物を買った人、泥棒した犯人
他主占有と自主占有

ちなみに、土地をAから賃借しているCは、賃借料も支払い、自分があくまでも土地を賃借しているだけというのが、意思表示からもわかります。
なので、所有の意思のない占有(他主占有)になりますので、何年住んでも、土地の時効取得はできません。

03 自己占有と代理占有

「占有」の種類として、「自己占有」と「代理占有」があります。

自己占有 自己のためにする意思をもって物を所持する占有のことです。
代理占有 代理人によって、占有することです。
例:
賃借人が賃貸アパートを占有している場合、賃借人を代理人として、間接的に賃貸人にも占有権が認められます。
この賃貸人の占有のことを代理占有といいます。
代理占有

04 占有の訴え

占有者は、占有が侵害されたときに、「占有の訴え」を提起することができます。

「占有の訴え」の趣旨は『自力救済の禁止』を担保するためです。

たとえば、Aが誰かに車を盗まれ、たまたまBの家にAの車があることを見つけた場合に、Aが自力で暴力行為をしてでも取り戻すという危険な行為を防ぐために、自力救済禁止の原則があります。
この「占有の訴え」には、次の3つがあります。
①占有保持の訴え
②占有保全の訴え
③占有回収の訴え

①占有保持の訴え

占有保持の訴えイメージ

占有保持の訴えの要件としては、『占有者がその占有を妨害されたこと』です。
そして、妨害の停止及び損害賠償を請求できます。

②占有保全の訴え

占有保全の訴え

占有保全の訴えの要件としては、『占有者がその占有を妨害されるおそれがあること』です。
そして、妨害の予防または損害賠償の担保を請求できます。

③占有回収の訴え

占有回収の訴え

占有回収の訴えの要件としては、『占有者がその占有を奪われたこと』です。
そして、物の返還及び損害賠償を請求できます。

占有の訴えまとめ表

占有の訴えについて、要件・請求できる内容・提訴期間をまとめた表が次のとおりです。

  占有保持の訴え 占有保全の訴え 占有回収の訴え
要件 占有者がその占有を妨害されたこと 占有者がその占有を妨害されるおそれがあること 占有者がその占有を奪われたこと
請求できること 妨害の停止及び損害賠償 妨害の予防または
損害賠償の担保
物の返還及び損害賠償
提訴期間 【原則】
妨害がある間または
妨害が消滅した後、1年以内
【原則】
妨害の危険がある間
占有が奪われた時から1年以内
【例外】
工事による占有物の損害は、工事着手の時から1年以内
又は工事完成まで
【例外】
工事による占有物の損害のおそれがあるときは、工事着手の時から1年以内
又は工事完成前まで

以上、占有権に関する、

01 占有権と所有権ってどう違う?
02 自主占有と他主占有
03 自己占有と代理占有
04 占有の訴え
 ①占有保持の訴え
 ②占有保全の訴え
 ③占有回収の訴え
 占有の訴えまとめ表
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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