権利移転型-贈与契約,売買契約

権利移転型契約-贈与・売買 契約各論

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今回の記事は、「契約」の中で『権利移転型の契約』に関する、

01 贈与契約
 a.書面によらない贈与の解除
 b.履行が終わった部分とは?
 c.特殊な贈与の種類
02 売買契約
 a.手付
   ①解約手付による解除
 b.契約不適合責任(売主の担保責任)
 c.買主の権利
   ①追完請求権
   ②代金減額請求権
   ③解除権
   ④損害賠償債権
 d.契約不適合責任を追求できる場合
   権利が契約の内容に適さない場合
   権利の一部が移転されない場合(一部他人物売買)
   抵当権が実行された場合
 e.売主の担保責任&買主の権利の期間制限
・・・についてです。

01 贈与契約

贈与契約

「贈与契約」とは、当事者の一方(贈与者)が、ある財産を無償で相手方(受贈者)に与える契約のことです。
要するに、プレゼントする契約のことです。

a.書面によらない贈与の解除

「贈与契約」が書面によらないで締結された(口頭で契約を結んだ)場合には、「贈与契約」はいつでも解除することができます。
このような場合を「書面によらない贈与」といいます。

※この趣旨は、贈与者が軽率に贈与することを予防し、かつ、贈与の意思を明確にすることにあります。

ただし、すでに受け取った物を返せと言われると、受贈者側としても困ってしまうので、

『履行の終わった部分』は、解除することができない
・・・とされています。

ちなみに、平成29年民法改正により、「書面によらない贈与」は「撤回」ではなく、「解除」と改正されました。
✖「書面によらない贈与」は「撤回」できる
「書面によらない贈与」は「解除」できる

b.履行が終わった部分とは?

では、『履行が終わった』の意味について次のようになります。

動産の場合 引渡しがあれば、「履行が終わった」に当たる
(※占有改定による引渡しを含む)
不動産の場合 引渡し or 登記の移転
不動産の場合の「履行が終わった部分」-引渡しor移転登記

c.特殊な贈与の種類

「贈与契約」は通常は無償でプレゼントすることですが、特殊な贈与として、次のものがあります。

定期贈与 定期の給付を目的とする贈与。

この「定期贈与」は、贈与者又は受贈者の死亡により、その効力を失います。
理由は、定期的に贈与してあげるというのは、贈与者と受贈者との信頼関係を基礎としているからです。
負担付贈与 贈与に際して、受贈者も何らかの給付義務を負担する贈与。

この負担付贈与は、その性質に反しない限り、双務契約(例:売買契約)に関する規定が準用されます。
死因贈与 贈与者の死亡によって、効力が生ずる贈与。

※似たもので「遺言による遺贈」があるが、「遺贈」は単独行為なので、その点が大きく違います。
ただ、その性質に反しない限り「遺贈」に関する規定が準用されます。

 

02 売買契約

売買契約

「売買契約」とは、当事者の一方(売主)が、ある物(財産権)を相手方(買主)に移転し、相手方がこれに対して、その代金を支払う契約のことです。(555条)

要するに、私たちがお店で品物を買い、代金を支払う買い物のことを、「売買契約」といいます。

 

a.手付

「手付」とは、契約を結ぶ際、当事者の一方(買主)から相手方に渡される金銭などのことです。

①解約手付 「約定」で「解除する権利の合意」という機能を持つ手付金
②証約手付 「契約成立の証拠」としての手付金
③違約手付 相手方の債務不履行に際して、受領者により没収される手付金
  損害賠償の
予定として
手付の没収だけで済ませ、別途、損害賠償請求をすることができない
  違約罰として 手付の没収以外に、現実に被った損害の賠償請求が可能

①解約手付による解除

「解約手付」による解除のPOINTとしては、次のとおりです。

【解約手付による解除】
①相手方が履行に着手していないこと。
②買主が解除する場合は「手付を放棄」し、売主が解除する場合は「手付の倍額を返還」する
(557条1項)
※手付の返還は、現実の提供が必要です。

なお、解約手付による解除権を行使しても、損害賠償請求することはできません。
解約手付は、そもそも損害賠償請求ナシで「解除できる権利」を約定で合意しているからです。

b.契約不適合責任(売主の担保責任)

売買契約の売主には、品質や数量などについて、契約内容に沿った物を引き渡す義務があります。
もしも、契約内容と異なる点があった場合には、「売主の担保責任」を問われます。

この「売主の担保責任」は、民法改正により、『契約不適合責任』として内容が改正されました。

【民法改正(2020年4月施行)】
これまでの売主の ” 瑕疵 ” 担保責任ではなく、「契約不適合といえるかどうか「売主の担保責任」の発生基準となりました。

「契約不適合」とは、売買の目的物が、”種類・品質・数量において契約の内容に適合しないこと”です。
納品された目的物に、契約内容と異なる点があることが判明したときには、「売主が負うべき責任」のことをいいます。

c.買主の権利

売主の「契約不適合責任」とは、納品された目的物に、契約内容と異なる点があることが判明したときには、「売主が負うべき責任」のことをいいますが、これを「買主側」からの視点でいうと「買主の権利」ということになります。


売主の契約不適合責任に対する「買主の権利」は、次の4つです。

買主の権利
①追完請求権・・・・目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し
②代金減額請求権・・・例:「欠陥があるから代金を安くしてくれ」
③解除権・・・欠陥があるから、契約を打ち切る
④損害賠償債権・・・債務不履行に基づく損害賠償請求
 
①~③については、売主の帰責事由がなくても、請求することができます。
④損害賠償請求は、売主に帰責事由がなければ、請求することができません。

①追完請求権

「追完請求権の内容」としては、目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しです。

例:
・購入したパソコンが初期不良だったので、
・買主は、売主へパソコンの修理を依頼したが、
・売主が同機種の新品のパソコン(代替物)を送ってきた。

「追完請求権」について、詳しくは下記の外部リンクへどうぞ▼

②代金減額請求権

「代金減額請求権」について、詳しくは下記の外部リンクへどうぞ▼

③解除権

「解除権」について、詳しくは下記の外部リンクへどうぞ▼

④損害賠償債権

「損害賠償債権」について、詳しくは下記の外部リンクへどうぞ▼

d.契約不適合責任を追求できる場合

買主が売主に対して、契約不適合責任を追求できる場合のいくつかの例をあげてみました。

権利が契約の内容に適さない場合

Bが、A所有の土地を購入したが、その土地にはCの地上権が設定されていて、せっかく土地を購入したBには土地が使えなかった。
この場合にBは、Aに対し、契約不適合責任を追求できる。
契約不適合責任の追求-購入した土地に他人の優先する地上権が設定されていて、使えなかった場合

権利の一部が移転されない場合(一部他人物売買)

Bが、Aから土地を購入したが、その土地の一部は、C所有(他人所有)であり、売主Aは真の所有者Cから所有権を取得できなかった。
この場合にBは、Aに対し、契約不適合責任を追求できる。

抵当権が実行された場合

Bが、A所有の土地を購入したが、その土地にはCの抵当権が設定されていて、抵当権が実行されてしまったので、結局、Bは所有権を取得できなかった。
この場合にBは、Aに対し、契約不適合責任の中で、
・損害賠償請求  ・解除
のみ請求することができる。

e.売主の担保責任&買主の権利の期間制限

買主が、売主の担保責任を主張できる(買主の権利)期間は、次のとおりです。

目的物の種類・品質に関する
契約内容の不適合
【原則】
買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知する
⇒通知しないときは、追完請求・代金減額請求・契約解除できなくなる
(566条本文)
【例外】
売主が引渡しの時に不適合について悪意又は重過失の場合、買主は売主に通知しなくても各種権利を行使できる
⇒この場合は、消滅時効の一般原則(166条1項)に戻る
目的物の数量・権利に関する
契約内容の不適合
566条の適用がなく、不適合を売主に通知しなくても各種権利を行使できる
⇒消滅時効の一般原則(166条1項)
買主が不適合を知った時から5年 or 目的物の引渡し時から10年

売主側は、品質に問題があると気づくのが難しく、目的物を引渡したあとは、「もう履行は終了した」と思っているので、品質に関する不適合については、売主が保護されます。

以上、権利移転型契約として、

01 贈与契約
 a.書面によらない贈与の解除
 b.履行が終わった部分とは?
 c.特殊な贈与の種類
02 売買契約
 a.手付
   ①解約手付による解除
 b.契約不適合責任(売主の担保責任)
 c.買主の権利
   ①追完請求権
   ②代金減額請求権
   ③解除権
   ④損害賠償債権
 d.契約不適合責任を追求できる場合
   権利が契約の内容に適さない場合
   権利の一部が移転されない場合(一部他人物売買)
   抵当権が実行された場合
 e.売主の担保責任&買主の権利の期間制限
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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