時効Ⅲ 時効の援用と放棄・時効の完成猶予と時効の更新

時効Ⅲ-時効の援用と放棄,時効の完成猶予と更新 時効

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「時効」については、3つのパートに分けて解説しています。

・時効Ⅰ-・時効とは? ・取得時効
・時効Ⅱ-・消滅時効
そして今回の記事は『時効Ⅲ 時効の援用と放棄 時効の完成猶予と時効の更新』についてです。

01 時効の援用と時効の放棄

時効は、ただ時効期間が経過しただけでは、時効の効果を得ることはできません。
「時効の利益を受ける旨の意思表示」をしなければなりません。
この「意思表示」のことを、「時効の援用」といいます。

逆に、時効の放棄とは、「時効の利益を受けない旨の意思表示」のことです。

a.時効の援用

時効の援用とは、「時効の利益を受ける旨」の意思表示のことです。
そして、時効の援用することができる当事者のことを「時効の援用権者」といいます。

【時効の援用権者】

援用権者に当たる者 援用権者に当たらない者
・保証人 ・一般債権者
・物上保証人 ・先順位抵当権の被担保債権につき後順位抵当権者
・抵当不動産の第三取得者 ・取得時効がかかってくる土地上の建物賃借人
詐害行為の受益者  

聞き慣れないワードが出てきますが、まだ学習していない内容です。

なので、今はザックリ学習し、物権・債権と学習した後で戻ってくると、すんなり入ってくると思います。

b.時効の放棄

時効の利益の放棄

時効の放棄とは、時効の援用をすることができるにもかかわらず、「時効の利益を受けない旨」の意思表示のことです。

人によっては、たとえ消滅時効になったとしても、お金を借りていたのできちんと返済したいと思う人もいるかもしれません。

そこで、時効の利益を放棄できるようにしています。

時効完成前の「時効の放棄」

時効の利益の放棄は、時効完成前にあらかじめ放棄することは、できません。

詳しくはこちらの外部リンク(司法書士ブログ)へどうぞ▼

時効完成後の「債務の承認」

時効完成後に「債務の承認」をした場合に、

・時効の完成を知りながら、「債務の承認」をしたのなら→「時効の利益の放棄」となります。
・時効の完成を知らずに、「債務の承認」をした場合
→「時効の利益の放棄」とはなりませんが、信義則上、時効の援用はできなくなります。

詳しくはこちらの外部リンク(司法書士ブログ)へどうぞ▼

02 時効の完成猶予と時効の更新

時効の完成猶予とは、時効の進行じたいは止まらないものの、時効の完成を一定期間、猶予することをいいます。
もっとかんたんに言うと、時効の進行を一時停止することです。
時効の更新とは、これまでに経過した時効期間をリセットし、あらためてカウント0からやり直し・再スタートさせることです。

a.時効の完成猶予

時効の完成猶予は、時効の進行じたいは止まらないものの、時効の完成を一定期間猶予し、時効の進行を一時停止することです。

裁判上の請求

債権者が、裁判を提起した(裁判上の請求)場合には、本来の「時効期間満了日」を過ぎても、確定判決までは、時効の完成は猶予され、時効は完成しません。

>>『民法/債権/多数当事者の債権債務Ⅰ/連帯債務/相対効・絶対効』へ戻る

催告(裁判外での請求)

債権者が、催告(裁判外での請求)した場合には、催告した時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効の完成は猶予され、時効は完成しません。

①催告
債権者から債務者に対し、返済するよう請求したときから6ヶ月を経過するまでの間は、時効は完成しません。
②訴えの提起
裁判を提起した場合には、本来の「時効期間満了日」を過ぎても、確定判決までは、時効の完成は猶予され、時効は完成しません。
時効の完成猶予-催告(裁判外での請求)

時効の完成猶予の事由と猶予される期間

時効の完成が猶予される事由は、上記事例の「裁判上の請求」以外にも、いくつか他にあります。
その「時効の完成猶予事由と猶予される期間」をまとめたものが次のようになります。

完成猶予の事由 完成猶予される期間
時効期間の満了前6ヶ月以内に、未成年者・成年被後見人に、法定代理人がいないとき(158条1項) 「本人が行為能力者となった時」又は
「法定代理人が就職した時」から6ヶ月
未成年者・成年被後見人が、その財産を管理する父母・後見人に対し、権利を有するとき(158条2項) 「本人が行為能力者となった時」又は
「後任の法定代理人が就職した時」から6ヶ月
時効期間の満了の時に、天災その他避けることができない事変のため、裁判上の請求等、強制執行に係る手続きを行うことができないとき(161条) 障害が消滅した時から3ヶ月
1⃣時効期間の満了前6ヶ月以内に、未成年者・成年被後見人に、法定代理人がいないときは、
(158条1項)
2⃣「本人が行為能力者となった時」又は「法定代理人が就職した時」から6ヶ月間は、時効の完成が猶予されます。
時効の完成猶予-時効期間満了の6ヶ月に法定代理人がいない

b.時効の更新

時効の更新とは、これまでに経過した時効期間をリセットし、あらためてカウント0からやり直し・再スタートさせることです。

裁判上の請求

債権者が、裁判を提起した(裁判上の請求)場合に、その裁判の判決が確定した時に、時効は更新し、あらためて「時効のカウント0」から再スタートします。

時効の更新-判決が確定すると、新たに時効が進行する

催告(裁判外での請求)

債権者が、催告(裁判外での請求)した場合には、催告した時から6ヶ月を経過するまでの間は、時効の完成は猶予され、時効は完成しません。
そして、その後訴えを提起し、判決が確定すると、「時効の更新」になります。

①催告
債権者から債務者に対し、返済するよう請求したときから6ヶ月を経過するまでの間は、時効は完成しません。
②訴えの提起
裁判を提起した場合には、本来の「時効期間満了日」を過ぎても、確定判決までは、時効の完成は猶予され、時効は完成しません。
③判決が確定する
その裁判の判決が確定した時に、時効は更新し、あらためて「時効のカウント0」から再スタートします。
時効の更新-判決が確定すると、その時点から時効が新たに進行する

仮に、債務者側が裁判で負けてしまって、その判決が確定すると、そこから新たに時効が進行します。
つまり、ここから再び、時効期間が過ぎてしまうと、また「消滅時効」にかかることになります。

>>『司法書士合格ブログ/民法/時効/消滅時効/時効の更新とは?』へ戻る

>>『用益物権/地役権/地役権の時効取得』へ戻る

承認による時効の更新

債務者が、「債務を承認」すると、その時から「時効は更新」し、あらためて「時効のカウント0」から再スタートします。

【事例】
①債権者が債務者に対し返済を督促し、債務者が「借金の存在を認めた」場合には、” 債務を承認 ” したことになります。
” 債務の承認 ” があると、その時から「時効は更新」し、あらためて「時効のカウント0」から再スタートします。
時効の更新-債務の承認があると、時効は更新する

「債務の承認」は、上記の事例のように債務の存在を認めることですが、たとえば、「今、お金ないので、あと1週間待ってもらえませんか?」みたいに返済期限の猶予を申し出た場合にも、「債務の承認」に当たります。

以上、

01 時効の援用と時効の放棄
 a.時効の援用
 b.時効の放棄
   時効完成前の「時効の放棄」
   時効完成後の「債務の承認」
02 時効の完成猶予と時効の更新
 a.時効の完成猶予
   裁判上の請求
   催告(裁判外での請求)
   時効の完成猶予の事由と猶予される期間
 b.時効の更新
   裁判上の請求
   催告(裁判外での請求)
   承認による時効の更新
・・・でした。お疲れ様でした。
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