制限行為能力者-Ⅰ 未成年者

制限行為能力者-未成年者 能力

未成年者とは、年齢18歳未満の者のことです。
※平成30年民法改正 2022/4/1より成人年齢が18歳となりました

未成年者には、「制限行為能力者制度」というルールが適用されています。
「制限行為能力者」とは、法律行為を行う場合に、有利かどうかの判断能力が十分でない者ということで、できる法律行為に制限を加えられます。

行為能力に制限を加えることで、「制限行為能力者」を保護する制度が「制限行為能力者制度」です。

【4つの制限行為能力者制度】
・未成年者
・成年被後見人
・被保佐人
・被補助人
今回の記事は、この中の「未成年者」についてです。

01 未成年者の保護者

未成年者には、保護者がつけられます。
未成年者の保護者は、未成年者を『法定により代理して法律行為を行う権限』を持っています。
この『法定により代理して法律行為を行う権限』のことを『親権』といいます。

そして、未成年者の保護者のことを『法定代理人』といいます。

a.未成年者の法定代理人の権限

未成年者の法定代理人

法定代理人には、次の4つの権限があります。

同意権 未成年者が単独でする法律行為を、事前に同意する権限です。
代理権 未成年者に代わって法律行為をする権限です。
取消権 未成年者が単独でした法律行為に対し、取消しをする権限です。
追認権 未成年者が単独でした法律行為を有効なものとして、事後に認める権限です。


ここで「取消権」を取り上げると、
たとえば、未成年者が法定代理人である親の同意を得ないで、勝手に法律行為(契約)をした場合には、親が後から「取り消す」対象となるということです。

>>『民法/家族法/親族/親子Ⅰ-実子/任意認知』へ戻る

>>『民法/家族法/親族/親子Ⅲ-親権』へ戻る

02 未成年者の法律行為

未成年者は、原則として、法律行為を単独で行うことはできません。
たとえば、親などの法定代理人の同意なく、未成年者が勝手にした法律行為は、法定代理人が後から取り消すことができます。

ただし、次の3つの例外があります。

1 単に権利を得、又は義務を免れる行為(5条1項但書)
2 法定代理人が処分を許した財産の処分(5条3項)
3 法定代理人から許された営業に関する行為(6条1項)

a.単に権利を得、又は義務を免れる行為

「単に権利を得、又は義務を免れる行為」の例としては、次のとおりです。

・パソコンをタダでもらう
・借金の免除を受けること

b.法定代理人が処分を許した財産の処分

「法定代理人が処分を許した財産の処分」の例としては、次のとおりです。

・特に使い道の指定なくもらったお小遣いで、ゲームソフトを買う
・学費としてもらったお金を、学費に使う

c.法定代理人から許された営業に関する行為

「法定代理人から許された営業に関する行為」の例としては、次のとおりです。

・実家のお店で、店員として働く

>>『不動産物権変動Ⅱ/取消し前の第三者/制限行為能力・強迫を理由とした取消し』へ戻る

03 法定代理人の追認と取消権の関係

法定代理人の権限の中に「追認権」があります。
未成年者が単独でした法律行為を有効なものとして、事後に認める権限です。

法定代理人が、未成年者の法律行為を追認した場合には、その契約は取り消すことができなくなります。
つまり、法定代理人が追認すれば、法定代理人も未成年者自身も、取消権が無くなります。


これを、事例を使ってイラスト図解付きで解説します。

1⃣未成年者Aは、法定代理人Bの同意を得ずに、Cと、20万円パソコンの売買契約をしました。
1⃣未成年者Aは、法定代理人Bの同意を得ずに、Cと、20万円パソコンの売買契約をしました。
2⃣法定代理人が追認すると、法定代理人も未成年者自身も取り消すことができなくなります。
2⃣法定代理人が追認すると、法定代理人も未成年者自身も取り消すことができなくなります。

04 取消しと現存利益の返還

未成年者がした法律行為(契約等)を取り消すと、相手方からもらった代金などあれば、返還しなければなりません。

通常の場合は、契約が取り消され、互いに「物を返す」と「受け取った代金を返す」というように、原状回復しなければなりませんが、制限行為能力者である未成年者は、ここが違ってきます。

制限行為能力者は、「現存利益」のみを返せばOKとされています。
※判断能力が十分でない制限行為能力者を保護するためです。

a.現存利益とは?

現存利益のみ返還義務

「現存利益」とは、

【生活費や学用品費等】
生活費や学用品費は、「受けた利益」がなくても、元々使っていたはずのお金です。
なので、ただ単に「受けた利益」の中から立て替えていただけで、自身の本来の生活費等は残っていることになります。
つまり、生活費等に使った場合は、現存利益が残っているので、返還しなければなりません。
【ギャンブルや遊興費】
ギャンブルに浪費してしまったお金は、現存利益は残っていない状態なので、返還しなくてもよくなります。
※「受けた利益」があったからこそ、浪費してしまったと考えられるからです。


ここから、「現存利益」についてイラスト図解でわかりやすく解説します。

1⃣未成年者Aは、法定代理人Bの同意を得ず、Cに時計等を売り、代金100万円を受け取りました。
ところが、法定代理人Bは、その売買契約を取消しました。
1⃣未成年者Aは、法定代理人Bの同意を得ず、Cに時計等を売り、代金100万円を受け取りました。
ところが、法定代理人Bは、その売買契約を取消しました。
2⃣未成年者Aは、受け取った代金100万円の内、80万円はギャンブルで浪費し、20万円は生活費等に使いました。
・生活費等→現存利益として20万円は、Cに返還しなければなりません。
・ギャンブルで浪費→現存利益は無いということで、80万円は、返還義務を免れます。
・生活費等→現存利益として20万円は、Cに返還しなければなりません。
・ギャンブルで浪費→現存利益は無いということで、80万円は、返還義務は免れます。
3⃣ということで、未成年者Aは現存利益である20万円のみ返還し、相手方Cは、購入した時計等を全て返還することになります。
未成年者Aは現存利益である20万円のみ返還し、相手方Cは、購入した時計等を全て返還することになります。

05 制限行為能力者制度の比較まとめ表

4つの制限行為能力者制度についての比較まとめ表は、次のとおりです。

  未成年者 成年被後見人 被保佐人 被補助人
要件 ・年齢18歳未満の者 ・精神上の障害により事理弁識能力・判断能力に欠ける常況にある者 ・精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者 ・精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者
家庭裁判所の審判が必要
保護者の名称 法定代理人
・親権者 or
・未成年後見人
成年後見人 保佐人 補助人
同意権                 △ ※1
代理権               △ ※1                 △ ※1
取消権                 △ ※2
追認権                 △ ※2

※1:「無い」のが原則ですが、家庭裁判所の審判で与えられます。
※2:「補助人の同意権」が与えられた場合のみ、補助人の「取消権・追認権」が認められます。

以上、制限行為能力者-未成年者についての、

01 未成年者の保護者
 a.未成年者の法定代理人の権限
02 未成年者の法律行為
 a.単に権利を得、又は義務を免れる行為
 b.法定代理人が処分を許した財産の処分
 c.法定代理人から許された営業に関する行為
03 法定代理人の追認と取消権の関係
04 取消しと現存利益の返還
 a.現存利益とは?
・・・でした。お疲れ様でした。
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