意思表示Ⅰ.心裡留保・虚偽表示・錯誤

意思表示Ⅰ-意思の不存在-心裡留保・虚偽表示・錯誤 意思表示

今回の記事は、「意思表示」についてのpartⅠです。
「意思表示/意思の不存在」として、

・心裡留保
・虚偽表示
・錯誤
・・・についてをわかりやすく解説しています。

民法 総則/意思表示のpartⅡ「詐欺・強迫」については以下のリンクからどうぞ▼

00 意思表示とは?

意思表示とは?

意思表示とは、一定の法律行為(例えば、売買契約)をするときに、「買います」「売ります」というように、申込みや承諾の意思を外部に対し、表示することをいいます。

そして、「意思表示」に欠陥がある場合には、次の2つがあります。

・意思の不存在
・瑕疵ある意思表示(>>『意思表示Ⅱ 詐欺・強迫による意思表示』
そして、「意思の不存在」には、次の3つがあります。
01 心裡留保
02 虚偽表示
03 錯誤
今回の記事では、この3つの「心裡留保」「虚偽表示」「錯誤」についてを、イラスト図解付きでわかりやすく解説します。

01 心裡留保

意思の不存在-心裡留保

心裡留保とは、「ウソをつく」ことです。
例えば、売るつもりもないのに、「売る」という意思表示をすることです。

【原則】
心裡留保による意思表示は、有効となります。
つまり、真意ではないのにウソをついたとしても、それは有効とされます。
原則として、心裡留保による意思表示は有効

【例外】
しかし、相手方がその意思表示が真実でないことを知っていた(悪意)又は知らなかった(善意)だったとしても、過失があった場合は、無効となります。
相手方が、悪意又は善意有過失の場合は、無効
【事例】
表意者Aが、100万円相当の車を、「1万円で売る」とウソをつきました。
相手方のBは、ウソとは知らず知らないことに過失なく、Aの言う事を信じて1万円で車を買うことにしました。
この場合には、AとBの売買契約は有効に成立します。
心裡留保-原則として有効-相手方が善意無過失

a.心裡留保-第三者の保護

心裡留保の相手方が、表意者のウソについて悪意又は有過失だった場合には、無効となります。
しかし、当事者の間では無効だったとしても、第三者が出てきた場合は違ってきます。

【事例】

1⃣Aは、Bに対し、売る気もないのに、100万円相当の車を1万円で売ると言い、AとBの間で売買契約が成立しました。
ですが実は、Bは、Aが真意でないことを知っていました。
心裡留保-相手方が悪意又は善意有過失
2⃣車を手に入れたBは、その後、事情を知らない(善意)第三者Cにその車を売りました。
心裡留保の表意者は、善意の第三者には対抗できない。
3⃣Aは、あわてて「あれは、いつものウソだったから」と、Cに対し車を返せと主張しましたが、善意の第三者には対抗できません。
心裡留保の表意者は、善意の第三者には対抗できない。
心裡留保の「無効」は、善意の第三者には対抗できません。
理由は、心裡留保の表意者は、帰責性があり、権利を失ったとしても自業自得です。
一方、何も知らずに取引をした第三者は、保護されます。
これは、取引の安全の面からも善意の第三者は保護されるべきだからです。

02 虚偽表示

意思の不存在-虚偽表示

「虚偽表示」とは、表意者が相手方と示し合わせて、真意でない、虚偽の意思表示をすることです。

虚偽表示による意思表示は、無効です。
【事例】
①Aは、Cから借金をしましたが、返済が滞り、唯一の財産である土地を強制執行で差押えられそうと心配でした。
②そこで、AはBと通謀し、土地をBに売買したことにし、土地をB名義にし、借金のカタに取られないよう、財産隠しをしました。
③この場合、AとBがした「虚偽表示」は無効です。
そしてその「無効」は、Cからも主張できます。つまり、Cは、無効を主張しAの土地の差押えが可能となります。

a.虚偽表示の第三者の保護

虚偽表示は、原則として無効です。
しかし、第三者が出てきた場合は、話しが違ってきます。

【事例】

1⃣Aは、土地の差押えを逃れるために、Bと通謀し、土地をB名義にするという虚偽表示をしました。
虚偽表示-通謀し、Aの土地をB名義へと虚偽表示をした
2⃣ところが、Bは、土地が自分名義になっているのをいいことに、第三者Cへ土地を売ってしまいました。
虚偽表示-Bは自分名義になっているのをいいことに、第三者に土地を売ってしまった

3⃣Aは、善意の第三者であるCに対し、虚偽表示だから無効だと主張し、土地の返還を求めても、それは通りません。
虚偽表示の当事者が、善意の第三者には対抗できません。

虚偽表示-善意の第三者には対抗できない。
虚偽表示による意思表示の「無効」は、善意の第三者には対抗できません。

b.94条2項の第三者に当たる?当たらない?

94条2項の第三者とは、虚偽表示の「当事者及び包括承継人」以外の者で、虚偽表示に基づいて 新たな独立の法律上の利害関係を有するに至った者のことです。

>>『94条2項の第三者に該当する例と該当しない例』

03 錯誤

意思の不存在-錯誤

錯誤とは、勘違いのことです。
そして「錯誤」には、「表示の錯誤」と「動機の錯誤」があります。

  内容 具体例
表示の錯誤 意思表示した内容と、実際の意思を欠く場合 有名な画家Xの作品だと勘違いし、画家Yの作品を購入してしまった。
動機の錯誤 意思表示した内容と実際の意思は合致するが、動機の面で錯誤していた場合 近くに駅ができると勘違いしていたので、その土地が値上がりすると思って購入することにしたが、実際には駅ができることはなかった。
【原則】
錯誤による意思表示は、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らし、重要なものであるときは、取り消すことができます。

【例外】
表意者に重大な過失があった場合には、錯誤による意思表示の取消しはできません。
【原則】
「動機の錯誤」は、原則として取消しすることはできません。

【例外】
表意者が、動機を相手方に表示していた場合には、錯誤による意思表示の取消しを主張することができます。
動機の錯誤-相手方に表示していた場合

動機の錯誤は、原則的には取消しはできませんが、意思表示の動機を相手方に表示していた場合には、取消しが可能となります。

>>『憲法/統治/裁判所Ⅰ/法律上の争訟に当たらない判例/板まんだら事件』へ戻る

a.錯誤の相手方

錯誤による意思表示の表意者に、重大な過失があった場合には、錯誤による意思表示の取消しはできないわけですが、相手方が次の2つの場合には、表意者は錯誤取消しが可能となります。

①相手方が悪意又は重過失の場合
②相手方が、表意者と同一の錯誤に陥っていた場合
・・・この場合には、表意者が重過失でも、取消しできます。
錯誤取消し-表意者に重過失、相手方も同一の錯誤

以上、意思表示についての、

00 意思表示とは?
01 心裡留保
 a.心裡留保-第三者の保護
02 虚偽表示
 a.虚偽表示の第三者の保護
 b.94条2項の第三者に当たる?当たらない?
03 錯誤
 a.錯誤の相手方
・・・でした。お疲れ様でした。
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