時効Ⅰ 取得時効

時効Ⅰ-時効とは? 取得時効 時効

「時効」については、3つのパートに分けて解説しています。

・時効Ⅱ-・消滅時効
・時効Ⅲ-・時効の援用と放棄 ・時効の完成猶予と時効の更新 
そしては、今回の記事は、『時効Ⅰ 時効とは何か・取得時効』についてです。

00 時効とは?

時効とは、ある事実状態が、長期間続いていることによって、その事実状態どおりの「権利の取得や消滅」を認めて、事実状態の安定を図ろうとする制度です。

時効には、次の2つの種類があります。

取得時効 例:他人の土地に、Bさんが長年住み続けているんであれば、Bさんに土地の所有権を認めて、事実状態を安定させようとする「取得時効」
消滅時効 例:AがCにお金を貸したが、取り立てることなく、そのまま月日が流れた場合に、Aの債権を消滅させようとする「消滅時効」

 

01 取得時効

時効取得できそうな人

取得時効の事例としては、次のような場合です。

Aの土地に、Bが勝手に家を建て長年住み続けていて、「取得時効」が成立し、土地の所有権をBが取得することになった。
 

a.所有権の取得時効の要件

所有権の取得時効の要件としては、次の5つです。

①所有の意思をもっている 所有者として、所有の意思を持って、所持していること
→賃貸で借りている状態では、所有の意思をもっているとは認められません。
②平穏・公然 平穏とは、暴力的な手段ではなく、
公然とは、占有を隠したりせず、堂々と占有していること
③他人の物 他人の物を占有していること
④時効期間 善意無過失で占有を開始したなら、10年間占有を継続すること
悪意で占有を開始したなら、20年間占有を継続すること
⑤援用する 時効期間が過ぎても、それだけでは時効が認められるわけではなく、「時効の援用」をすること
上記の要件のうち、①所有の意思 ②平穏・公然 ③善意の3つは、推定を受けるので、原則として証明しなくとも認められます。

豆知識ですが、
「①所有の意思」については、泥棒した人でも、所有の意思は認められるとされています。

b.時効取得できるものとその効果は?

時効取得できるものは、

・所有権
・地上権,永小作権,地役権,不動産賃借権

・・・です。
そして、長年の経過により時効取得した場合には、占有を開始した時点から ” 原始取得 ” していたことになります。

【原始取得とは?】
なんの成約もない、ピュアな状態で取得していたことになります。
たとえば、甲土地には元々、抵当権が設定されていましたが、原始取得されると、抵当権は消滅し、なんの成約もない土地を取得したことになります。

>>『不動産物権変動Ⅲ/取得時効と登記/時効完成時の元の所有者』へ戻る

>>『用益物権/地役権/地役権の時効取得』へ戻る

c.占有の承継(引き継ぎ)

時効取得するには、所有の意思をもって、平穏かつ公然と他人の物を、一定期間占有を継続しなければなりませんが、『一定期間占有を継続する』の中には、『占有の承継』も含まれます。

ここから、『占有を継続(引き継ぎ)』について事例を踏まえて、イラスト図解付きで解説します。

【事例-悪意占有】
1⃣Bは、Aの土地であることを知りながら、勝手に自分で家を建てて、15年間占有をし続けていました。
Bは悪意で占有を開始し、15年間占有を続けた
Bは悪意で占有を開始し、15年間占有を続けた
2⃣15年占有を続けた後、Bが亡くなりCが相続し、Cはその後5年間占有を続けました。
15年占有を続けた後、Bが亡くなりCが相続し、Cはその後5年間占有を続けました。
3⃣Cは、Bの15年間とCの5年間を合わせて、悪意占有を20年間継続ということで、取得時効が完成します。
そして、Cは時効の援用をすれば、Bが占有を開始したときに遡って(さかのぼって)土地の所有権を時効取得します。
CはBの占有期間と合わせて時効取得することができる

このように、前者の占有継続期間を足して、時効の完成をすることができます。
そして、足した場合は、前者が悪意占有だったか善意占有だったかが基準となります。

以上、時効についての、

00 時効とは?
01 取得時効
 a.所有権の取得時効の要件
 b.時効取得できるものとその効果は?
 c.占有の承継(引き継ぎ)
・・・でした。お疲れ様でした。
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