役務提供型契約Ⅱ-委任契約,寄託契約

役務提供型契約Ⅱ-委任契約,寄託契約 契約各論

今回の記事は、役務提供型契約Ⅱとして、

01 委任契約
02 寄託契約

・・・についてです。

役務提供型契約-委任契約,寄託契約

01 委任契約

「委任契約」とは、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方(受任者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約のことをいいます。

【委任契約の例】
Aは交通事故を起こし、被害者Cとの示談交渉をするよう弁護士Bに申し込みし、Bはこれを引受けることを承諾しました。

・委任者:A
・受任者:B で、AとBとの間で委任契約が成立しました。
委任契約

「委任契約」は「特約」がなければ、「報酬」を請求できません。

古くは、誰かに法律行為の代理人を依頼するときは、それなりの身分の「紳士」にお願いしていました。
そして「紳士」は、そういうことは「無償」で引受けるものというのがありました。
なので、いまだに、「委任契約」は原則的に「無償」です。
「報酬」を請求するなら「特約」が必要だということです。

「特約付きで報酬あり」の「委任契約」が、解除などで「事務が途中で終了」したとしても、受任者(例:弁護士)は、” 履行の割合に応じて ” 報酬の請求をすることができます。(648条3項)

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a.受任者の義務

①善管注意義務

受任者は、報酬が発生する「有償委任」でも、報酬が発生しない「無償委任」でも、『善管注意義務』を負います。(644条)

【善管注意義務】
善良な管理者の注意を持って、委任事務を処理する義務を負います(644条)

ここの「善管注意義務」と「注意義務が軽減される者」については、民法全般にわたるものです。
なので、最後の家族法(相続)まで学習を終えた後に見直すと理解し易いと思います。

  善管注意義務を負う者 注意義務が軽減されている者
財産法 留置権者(298条1項) ①無報酬の寄託者(659条)
質権者(350条,298条1項)  
特定物引渡し債権の債務者(400条)  
④受任者(644条)※委任契約の場合  
⑤事務管理者
(※緊急事務管理(698条)を除く)
 
家族法 ①後見人(869条,644条) ①親権者(827条)
②後見監督人(852条,644条) ②熟慮期間中の相続人(918条1項)
③遺言執行者(1012条3項,644条) ③限定承認者(926条1項)
  ④相続放棄者(940条1項)

※『注意義務が軽減されている』とは、『自己の財産に対するのと同一の注意』で足りるというように、注意義務が軽減されているということです。

②受任者の付随的義務

受任者の義務の内容は契約ごとに多様ですが、通常なすべき事柄についての規定があります。

委任事務を処理する義務
(644条の2)
受任者は、自ら委任事務を処理する義務があります。
→請負と違って、委任は信頼関係を重視する契約のため、頼まれた仕事は自ら処理することが要求されるということです。
報告義務
(645条)
・受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理状況を報告する義務があります。
・委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告する義務があります。
受取物・果実の引渡義務
(646条)
・受任者は、委任事務の際受け取った金銭その他の物(果実等)を、委任者に引き渡す義務があります。
取得権利の移転義務
(646条2項)
・受任者は、「委任者のために自己の名で取得した権利」を委任者に移転する義務があります。
金銭消費の責任
(647条)
・受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならず、なお損害があるときは、その賠償の責任を負います。

b.委任者の義務

委任者の義務としては次のようなものがあります。

費用前払義務
(649条)
委任事務を処理するのに、「費用」を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払いをしなければなりません。
※「費用」と「報酬」は別ものです。「費用」は前払いが原則です。
費用償還義務
(650条1項)
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出以後における利息の償還を請求することができ、委任者はこれを支払う義務があります。
債務の代弁済・担保提供義務
(650条2項)
・受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求でき、委任者はこれを支払う義務があります。
・その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができ、委任者が相当の担保を供する義務が発生します。
取得権利の移転義務
(646条2項)
・受任者は、「委任者のために自己の名で取得した権利」を委任者に移転する義務があります。

c.委任の終了

①任意解除権

「委任契約」は、各当事者がいつでもその解除をすることができます。(651条1項)

もっとも、次のような場合には、相手方の損害を賠償しなければなりません。

・当事者の一方が、相手方に不利な時期に「委任の解除」をしたとき
・委任者が、「受益者の利益をも目的とする委任」の解除をしたとき
・・・このような場合には、やむを得ない事由があったときを除き、相手方の損害を賠償しなければなりません。(651条2項)

②委任の終了原因

委任の終了原因としては、「死亡」「破産」「後見開始」があります。

  死亡 破産手続開始決定 後見開始の審判
委任者
(例:依頼人)
終了 終了 終了しない
受任者
(例:弁護士)
終了 終了 終了

委任者(例:依頼人側)が、後見開始の審判を受けた場合には、自分でできないことが多くなり、むしろ「誰かに委任する必要性が増す」とおぼえるといいです。

02 寄託契約

「寄託契約」とは、当事者の一方(寄託者)がある物を「保管する・預かる」ことを、相手方(受託者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約のことをいいます。(657条)

【寄託契約の例】
Aは、画商Bに対し、絵画を預かってほしいと申し込み、Bは絵画を預かることを承諾しました。
寄託契約
平成29年民法改正により、「寄託契約」は要物契約ではなく、『諾成契約』になりました。

「寄託契約」も「委任契約」と同じく、「特約」がなければ、「報酬」を請求できません。
(665条,648条1項)

a.善管注意義務の比較-「委任」と「寄託」 契約

「無報酬の寄託契約」での「受寄者」は、『自己の財産に対するのと同一の注意をもって』寄託物を保管すれば足ります。

一方、「特約があり有償の寄託契約」での「受寄者」は、『善良な管理者の注意をもって』寄託物を保管する義務があります。


ここで、先程の「委任契約」と、この「寄託契約」との「注意義務」について比較まとめ表は次のとおりです。

  委任契約 寄託契約
報酬について「特約」がある 善良な管理者の注意義務 善良な管理者の注意義務
報酬について「特約」ナシ 善良な管理者の注意義務 自己の財産に対するのと同一
の注意でOK

b.受寄者・寄託者の義務

「寄託契約」での受寄者・寄託者の義務は、「委任契約」の規定が準用されます。

受寄者の義務 寄託者の義務
①受領物・果実の引渡義務(646条) ①特約がある場合の報酬支払い義務(648条)
②取得権利の移転義務(646条2項) ②費用前払義務(649条)
③金銭消費の責任(647条) ③費用償還義務(650条1項)
  ④債務の代弁済・担保提供義務(650条2項)

c.寄託物の返還時期

保管し預かっていた「寄託物」を返還する時期については次のとおりです。

  返還時期を定めた場合 返還時期を定めなかった場合
寄託者 いつでも返還を請求できる
受寄者 やむを得ない事由がある場合を除き、返還時期に返還する(663条2項) いつでも返還できる
(663条1項)

以上、役務提供型契約Ⅱとして、

01 委任契約
 a.受任者の義務
  ①善管注意義務
  ②受任者の付随的義務
 b.委任者の義務
 c.委任の終了
  ①任意解除権
  ②委任の終了原因
02 寄託契約
 a.善管注意義務の比較-「委任」と「寄託」 契約
 b.受寄者・寄託者の義務
 c.寄託物の返還時期
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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