債務不履行-履行遅滞・履行不能,損害賠償責任,金銭債務の特則

債務不履行-履行遅滞・履行不能,損害賠償責任,金銭債務の特則 債務不履行

今回の記事は、債務不履行に関する、

01 債務不履行とは?
 a.履行遅滞
   履行遅滞の時期
 b.履行不能
   社会通念に照らし履行不能な場合の例
 c.履行遅滞中に履行不能となった場合
02 債務不履行の効果
 a.損害賠償責任
03 金銭債務の特則
・・・についてです。

01 債務不履行とは?

「債務不履行」とは、債務者が債務の本旨に従った履行をしないことをいいます。

この「債務不履行」には、次の3つの種類があります。

a.履行遅滞・・・期限を過ぎる
b.履行不能・・・履行することが不能となる
c.不完全履行・・・形の上では履行がなされたが、それが債務の本旨に従った完全な履行ではない

a.履行遅滞

【履行遅滞の例】

Aは、Aの軽トラックを、同業者のBに売却することにし、Bからは代金を支払ってもらったのにもかかわらず、軽トラックの ” 引渡しが遅れている ” 場合。
履行遅滞-買主が代金を支払ったし期限を徒過しても引渡しをしない


「履行遅滞」は、簡単にいうと、たとえば引渡し債務なら『引渡しが遅れた』場合のことですが、「履行遅滞」といえるためには、次の3つの要件があります。

【履行遅滞(履行が遅れた)の3つの要件】

1 履行すること自体は、可能であること
2 履行期を徒過したこと
3 履行期に履行しないことに違法性があること
→つまり、「同時履行の抗弁権」や「留置権」が存在しないこと

 

同時履行の抗弁権や留置権は、簡単にいうと、

『相手方だけではなく、こちら側にもすべきことがある場合』です。

たとえば、

「そもそも、お金を支払ってないから、相手は物を引渡してくれなくても当たり前」
・・・みたいな場合です。
そんな場合には、相手方の「履行遅滞」とは、なりません。

※「留置権」についてくわしく知りたい方は、下記のリンクからどうぞ▼

履行遅滞の時期

では、いつから「履行遅滞」となってしまうのかの、「履行遅滞の時期」については、次のとおりです。

確定期限のある債務 期限が到来した時(412条1項)
不確定期限のある債務 期限到来後に、債権者から履行の請求があった時 又は、
債務者が期限の到来を知った時のいずれか早い時(412条2項)
期限の定めのない債務 債権者から履行の請求があった時(412条3項)

「不確定期限」とは、たとえば、「私が死んだらこの車をあげる」というように、
・いつか必ずその日はやってくる

・いつになるのかは、まだ不明だ

・・・という場合のように「不確定な期限」のことをいいます。

b.履行不能

「履行不能」とは、たとえば目的物である家が、火事で滅失してしまった場合です。

また、このような「物理的に履行できない」場合だけではなく、社会通念に照らして「不能」であるときも「履行不能」とされたいます。(412条の2第1項)

社会通念に照らし履行不能な場合の例

社会通念に照らして「不能」であるときの例としては、不動産の二重譲渡の場合があります。

①Aは、自己所有の土地を、Bに売買しました。
②Bがその登記をしない間に、Aは、その土地をCにも二重譲渡しました。
③そして、第2買主Cは、登記を入れました。
④ここで、AのBに対する「土地引渡し債務」は、「履行不能」となります。
(※Bは、Aに対する履行不能による損害賠償請求が可能です。)
履行不能-二重譲渡があり、相手方が登記を入れた場合には、履行不能となる

c.履行遅滞中に履行不能となった場合

たとえば、目的物である建物の引渡しが遅れている、つまり、「履行遅滞中」のときに、建物が震災で滅失してしまった場合のように、『履行遅滞中に履行不能となった場合』について解説します。

1⃣AとBの間で建物の売買契約が成立し、「7月1日に建物の引渡し」となっていました。
ところが、Aは、7月1日には建物の引渡しをせず、引渡し債務の履行を遅滞していました。
1⃣引渡し債務の履行遅滞中
2⃣履行遅滞中の7月12日に震災により、建物が滅失してしまいました。
この場合、「履行不能」になってことについては、Aに責任はないものの、履行遅滞の段階でAに責任があるので、Aの帰責事由により、履行不能となったとみなされます。
履行遅滞中に履行不能になった場合には、売主に帰責事由があるとみなされる

結果として、売主Aは、買主Bに対し、損害賠償責任を負うことになります。

02 債務不履行の効果

債務不履行があった場合に、債権者は、

①履行の強制(414条)
②損害賠償請求(415条)

・・・といった2つの措置をとることができます。

a.損害賠償責任

債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができます。

債務者に帰責事由が無い場合には、債務者は損害賠償責任を負いませんが、それ以外では損害賠償責任を負います。

【損害賠償について】

損害賠償の方法 特約がなければ、金銭で支払います。(417条)
金銭を支払うことによって損害が発生しなかった状態を回復する金銭賠償が原則です。
損害賠償の範囲 原則:通常生ずべき損害の範囲に限られます。(416条1項)
例外:特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができます。
(416条2項)
損害の調整(過失相殺) 債務不履行又は損害の発生等に関して、債権者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して、損害賠償の責任及び額を定めるものとされています。
(418条)
損害賠償額の予定 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができます。
(420条1項)

03 金銭債務の特則

物の引渡し債務とは違って、「金銭債務」には特則があります。
それは、「金銭債務」には「履行不能」は適用されず、すべて「履行遅滞」となります。

「金銭債務」に「履行不能」がない理由としては、「物」は物理的に無くなることはあっても、「金銭」がこの世から無くなるという概念がないからです。

なので、「金銭債務」に関しては、その個人にお金がなくって支払えなかったとしても、「履行遅滞」になるということです。

以上、債務不履行に関する、

01 債務不履行とは?
 a.履行遅滞
   履行遅滞の時期
 b.履行不能
   社会通念に照らし履行不能な場合の例
 c.履行遅滞中に履行不能となった場合
02 債務不履行の効果
 a.損害賠償請求
03 金銭債務の特則
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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