所有権とは、自分の物を自由に①使用②収益③処分することができる権利のことです。
今回の記事は、この「所有権」に関する、
a.隣地使用・立入り権
b.隣地通行権
c.境界に関するルール
02 共有
a.共有物の『ほ・かん・へん』
b.共有物分割請求
03 所有者不明土地・建物の管理命令
04 管理不全土地・建物の管理命令
01 相隣関係
土地は通常、自分の土地と他人の土地とが隣接しています。
そうすると、土地の利用についてのトラブルが想定できます。
そこで、民法では、隣接する土地相互間の「相隣関係」というルールを設けています。
①隣地使用・立入り権
②隣地通行権
③境界に関するルール
a.隣地使用・立入り権
土地の所有者は、
・境界標の調査又は境界に関する測量
・境界線を超えた枝の切取りのための必要な範囲内
※住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできません。
令和3年の民法改正によって、隣地の使用の請求権ではなく、「隣地の使用権」が認められることとなりました。
それに、隣地使用の目的も拡大されました。
b.隣地通行権
他の土地に囲まれてしまって、公道に通じていない土地の所有者は、他人の土地を通行することができます。
これを、「隣地通行権」といい、趣旨としては土地の有効な利用を図るというものです。
Bは、Aの土地を通らないと公道に出ることができないです。
このような場合に、Bは、必要最小限の範囲で、Aの土地を通行することができます。
これが、隣地通行権です。
c.境界に関するルール
民法では、隣地との境界に関して様々な規定があります。
①継続的給付を受けるための設備の設置権等
土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気・ガス・水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができます。(213条の2第1項)
②雨水を隣地に注ぐ工作物の設置禁止
土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはなりません。(218条)
③境界線
・土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界線を設けることができます。(223条)
・境界線上に設けた境界標・囲障・障壁・溝・塀は、相隣者の共有に属するものと推定されます。(229条)
④竹木の切除および根の切取り
・土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を超えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができます。(223条1項)
・土地の所有者は、隣地の竹木の根が境界線を超えるときは、その根を切り取ることができます。(223条4項)
つまり、竹木の根はこっちで切り取ることができるけど、竹木の枝は、竹木の所有者自身に枝を切除してもらわないといけなくって、こっちで切ってはダメってことです。
これは、盆栽をイメージしてみて下さい。盆栽は高いものなら何千万円以上するものがありますが、その「盆栽の枝」の切り取り方はすごく重要なポイントになってきます。
つまり、「盆栽の枝」には価値があります。
だから、「根」より「枝」のほうが高価なものと覚えてください。
ただし、竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないときは、土地の所有者が枝を切り取ることができるのニャ。
(233条3項1号)
⑤境界線付近の建築制限
建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければなりません。(234条1項)
02 共有
「共有」とは、たとえば、土地や建物等を夫婦や兄弟で共同で所有することをいいます。
そして、「じゃあ、どのぐらいの割合で、共有しているの?」ってことで、それぞれの「共有持分」があります。
「共有持分」とは、共有者のそれぞれが目的物に対して有している権利のことです。
【夫婦で、共有持分1/2ずつの所有権を持っている場合のイメージ図▼】
a.共有物の『ほ・かん・へん』
共有物は、各共有者が「共有物の全部」について、その持分に応じた利用をすることができます。
共有物の利用は、単独ですることができ、具体例としては共有土地全体の利用などがそうです。
そして、共有物の使用については、「保存」「管理」「変更」という規定があります。
【共有物の ほ・かん・へん】
保存 | 管理 | 変更 |
ほ | かん | へん |
保 存 (252条5項) |
管 理 (252条1項) |
変 更 (251条1項) |
|
意義 | 共有物の原状を維持する行為 | 共有物の性質を変えることなく、これを利用し又は改良する行為 | 共有物の性質・形状・効用の著しい変更をする行為 |
要件 | 単独でできる | 持分の価格の過半数の同意 | 共有者全体の同意 |
具体例 | ・不法占有者に対する明渡し請求 ・共有物の修繕 |
・所定の期間を超えない賃借権等の設定 ・共有物の賃貸借契約の解除 |
・共有物の売却 ・田を宅地に変更する ・共有地への地上権の設定 |
b.共有物分割請求
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます。
そして、「分割」には、次の3つの方法があります。
②代金分割
③価格賠償
1つの土地を、2人で共有しているという事例で、「分割」について解説します。
①現物分割
現物分割とは、土地じたいを、2つに分けることです。
②代金分割
いったん土地を売って、その代金を分ける方法です。
③価格賠償
土地を共有者の一人Aの単独所有とし、Aは他の共有者Bに対してお金で賠償する形で、分ける方法です。
03 所有者不明土地・建物の管理命令
従来、所有者が不明な土地や建物の発生により、所有者を探すのに多大な時間と費用がかかってしまい、公共事業や復興事業が円滑に進まず、土地の有効活用が阻害されていました。
そこで、2021(令和3)年の民法改正により、裁判所が、利害関係人の請求により、必要があると認めるときに、所有者不明土地・建物管理人を選任して、その管理人による管理を命ずることができるようになりました。
管理命令の要件 | ①所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき |
②利害関係人の請求 ・土地等の管理不全により不利益を被るおそれがある隣接地の所有者 ・土地等を時効取得したと主張する者 ・土地等を取得してより適切な管理をしようとする民間の買受希望者等 |
|
③裁判所が必要であると認めるとき |
04 管理不全土地・建物の管理命令
土地や建物の所有者が明らかであっても、その所有者が土地・建物を管理せず、これを放置していることで、他者への権利侵害につながるおそれがあります。
そこで、2021(令和3)年の民法改正により、裁判所が、利害関係人の請求により、必要があると認めるときに、管理不全土地・建物管理人を選任し、その管理人による管理を命ずることができるようになりました。
管理命令の要件 | ①所有者による管理が不適当であることによって、他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがあるとき |
②利害関係人の請求 ・隣地の擁壁が劣化により倒壊し、それにより土砂崩れのおそれがある土地の隣地の所有者 ・ゴミの不法投棄を土地等の所有者が放置したことにより臭気や害虫が発生し、これにより被害を受けている者 |
|
③裁判所が必要であると認めるとき |
以上、所有権に関する、
a.隣地使用・立入り権
b.隣地通行権
c.境界に関するルール
①継続的給付を受けるための設備の設置権等
②雨水を隣地に注ぐ工作物の設置禁止
③境界線
④竹木の切除および根の切取り
⑤境界線付近の建築制限
02 共有
a.共有物の『ほ・かん・へん』
b.共有物分割請求
①現物分割
②代金分割
③価格賠償
03 所有者不明土地・建物の管理命令
04 管理不全土地・建物の管理命令