幸福追求権-肖像権・プライバシー権・自己決定権

幸福追求権 その他人権

今回の記事は、この「幸福追求権」についてです。

a.肖像権
  ・京都府学連事件
b.プライバシー権
  ・ノンフィクション「逆転」事件
  ・指紋押捺拒否事件
  ・早稲田大学講演会参加者名簿事件
c.自己決定権
  ・エホバの証人輸血拒否事件
・・・という内容を、イラスト図解付きで、わかりやすくまとめています。

幸福追求権とは?

憲法には、14条~40条(自由権・社会権・参政権・受益権)で、様々な「人権」が明記されています。
ただ、社会の変化により現代では、憲法が作られた当時では考えられなかった「プライバシーの権利」というものも重要な「人権」だといえます。

そこで、14条~40条には明記されていない人権であっても、個人が人格的に生存するために不可欠な「新しい人権」として、憲法上保障されます。

そして、この新しい人権が、13条後段で規定される「幸福追求権」です。
この「幸福追求権」には、大きく分けて次の3つがあります。

a.肖像権
b.プライバシー権
c.自己決定権

a.肖像権

新しい人権として認められたものの一つに「肖像権」があります。
この「肖像権」に関する判例をあげています。

京都府学連事件(最大判昭44.12.24)

【事案】
学生がデモ行進に参加した際に、行進方法が許可条件に違反すると判断した警察官が、犯罪捜査のために行った無断での写真撮影が、憲法13条に違反しないかが争われた。
京都府学連事件(最大判昭44.12.24)
【結論】
合憲
【判旨】
『同意なく国家機関により容ぼうを撮影されない自由』
何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由を有するから、警察官が正当な理由なく、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条の趣旨に反し許されない。

『撮影が許されるのは、どんな場合か』
警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影する際、その対象の中に犯人のみならず、第三者である個人の容ぼう等が含まれていても、これが許容される場合がありうる。
具体的には、「現に犯罪が行われもしくは行われたのち、間がないと認められる場合」であって、「しかも証拠保全の必要性および緊急性」があり、かつ「その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるとき」には、警察官の写真撮影は許される。

b.プライバシー権

新しい人権として認められたものの一つに「プライバシー権」があります。
この「プライバシー権」に関する判例をあげています。

ノンフィクション「逆転」事件(最判平6.2.8)

【事案】
ノンフィクション小説「逆転」の中で、過去に傷害事件で有罪判決を受けた前科を、実名で掲載された者が、その作者に対して、プライバシー侵害を理由に損害賠償を求めて争った。
ノンフィクション「逆転」事件(最判平6.2.8)
【結論】
損害賠償請求は認められる。
【判旨】
『実名を掲載することの可否』
事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められるような場合には、事件の当事者についても、その実名を明らかにすることが許されないとはいえない。

『損害賠償請求の可否』
公表する理由よりも、公表されない法的利益が優越するときには、前科を公表された者は、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を請求することができる。

結果として、小説の中での実名使用は、認められませんでした。

指紋押捺拒否事件(最判平7.12.15)

【事案】
外国人登録法により、外国人登録原票などへの指紋押捺を義務付けられたことが憲法13条に違反しないかが争われた。
※外国人指紋押捺制度:1999年外国人登録法改正により廃止されています。
※外国人登録法:2012年に廃止されています。
指紋押捺拒否事件(最判平7.12.15)
【結論】
合憲
【判旨】
『指紋とプライバシー』
指紋は、性質上、万人不同性・終生不変性をもつので、採取された指紋の利用方法次第で、個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険性がある。

『外国人の指紋押捺を強制されない自由』
国家機関が、国民に対して正当な理由なく、指紋の押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反して許されず、この自由の保障は、わが国に在留する外国人にも等しく及ぶ。

『外国人登録法が定めていた指紋押捺制度の合憲性』
その立法目的に十分な合理性があり、かつ、必要性も肯定できるものであり、方法としても一般的に許容される限度を超えない相当なものであったと認められる。

早稲田大学講演会参加者名簿事件(最判平15.9.12)

【事案】
早稲田大学が、講演会開催にあたって入手した参加者名簿(参加者の学籍番号・氏名・住所・電話番号が記載)の写しを警察に提出したことに対し、参加者がプライバシーの侵害を理由に損害賠償請求訴訟を提起した。
早稲田大学講演会参加者名簿事件(最判平15.9.12)
【結論】
損害賠償請求は認められる。
【判旨】
『講演会の参加申込者の学籍番号・氏名等の性質』
大学が講演会の主催者として、学生から参加者を募る際に収集した参加申込者の学籍番号・氏名等の情報は、大学が個人識別等を行うための単純な情報であって、その限りにおいては、隠匿されるべき必要性が必ずしも高いものではない。

『法的保護の有無』
しかし、それを他者にみだりに開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は、保護されるべきであるから、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となる。

つまり、氏名等の個人情報は、個人の内面に関わるような隠匿性の高いものではないにしろ、それでも、プライバシー保護の必要があるとしています。

c.自己決定権

新しい人権として認められたものの一つに「自己決定権」があります。
自己決定権とは、個人の人格的生存にかかわる重要なことを、国家権力の干渉なしに各自が決定することができる権利のことです。

例:避妊や中絶,ライフスタイル,医療拒否や尊厳死

この「自己決定権」に関する判例をあげています。

エホバの証人輸血拒否事件(最判平12.2.29)

【事案】
エホバの証人の信者が、自己の意思に反して輸血をされたことで、輸血をした医師に対して、自己決定権の侵害を理由に損害賠償を求めて争った。
【結論】
損害賠償請求は認められる。
【判旨】
患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内用として尊重されなければならない。

以上、幸福追求権についての、

a.肖像権
  ・京都府学連事件
b.プライバシー権
  ・ノンフィクション「逆転」事件
  ・指紋押捺拒否事件
  ・早稲田大学講演会参加者名簿事件
c.自己決定権
  ・エホバの証人輸血拒否事件
・・・でした。お疲れ様でした。
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