今回の記事は、不動産物権変動Ⅱとして、登記を必要とする物権変動についてです。
a.取消し前の第三者
詐欺による意思表示の取消し
制限行為能力・強迫を理由とした取消し
b.取消し後の第三者
c.取消し前・後の第三者まとめ
02 解除と登記
a.解除前・解除後の第三者
「不動産物権変動」については、この記事以外に、ⅠとⅢがあります。
物権変動と登記,177条の第三者
取得時効と登記,相続・遺産分割と登記
01 取消しと登記
売買契約が成立し、物権変動が起これば、その目的物の所有権は移転します。
たとえば、元々の所有者(売主)と買主の間で売買契約が成立し、目的物の所有権が買主に移転したという場合です。
でもその売買契約を取り消すと、一度移転した所有権は、元々の所有者(売主)に戻ります。
ただ、元々の所有者(売主)と買主だけではなく、第三者が存在した場合、元々の所有者と第三者のどちらを所有者とするのかが問題となります。
そこで、「契約の取消し」に第三者が絡んでいるケースの、
b.取消し後の第三者
・・・についてをイラスト図解付きでわかりやすく解説します。
a.取消し前の第三者
詐欺による意思表示の取消し
詐欺による意思表示は、取り消すことができますが、その場合の「取消し前の第三者」について解説します。
1⃣Aの土地をBに売却し、BはこれをさらにCに転売したところ、AがBの詐欺を理由に売買契約を取消しました。
この場合に、Cは善意かつ無過失でしたが、登記は備えていませんでした。
一方、善意無過失のCは、登記を備えていなくても、「取消し前の第三者」として所有権を主張できます。
詐欺による意思表示の取消しについて、くわしく知りたい方はこちらのリンクからどうぞ▼
制限行為能力・強迫を理由とした取消し
「未成年者の取消し」など詳しく知りたい方は、こちらのリンクからどうぞ▼
まとめると、
制限行為能力や強迫を理由として取消した者は、取消し前の第三者が善意無過失であっても、登記なくても対抗することができます。
逆に、詐欺や錯誤による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者には対抗できません。
そしてこの場合の善意無過失第三者は、登記なくして対抗できます。
b.取消し後の第三者
詐欺による意思表示は、取り消すことができますが、その場合の「取消し後の第三者」について解説します。
1⃣Aは、Bの詐欺により自己所有の土地をBに売却し、所有権をBに移転登記しました。
その後、Aは騙されたことに気付き、売買契約を取消しました。
ところが、まだ登記がBに残っているうちに、Bは土地をCに転売し、Cは登記を得ました。
なので、土地の返還請求をすることはできません。
詐欺による意思表示の取消し後の場合は、Bを起点とするAとCへの二重譲渡の関係と考えていくことになります。
だから、登記があるかないかの「対抗問題」となります。
c.取消し前・後の第三者まとめ
取消し前の第三者と取消し後の第三者についてまとめた表は次のようになります。
AからBへの売買契約、その後C(第三者)への転売という前提のまとめ表です。
Aが制限行為能力・強迫を理由に取消し | Aが詐欺・錯誤による意思表示の取消し | |
取消し前の第三者 | Aの勝ち | 【Cが善意無過失】 Cの勝ち 【Cが悪意又は有過失】 Aの勝ち |
取消し後の第三者 | ACの登記の先後で勝ちが決まる (先に登記した方が勝ち) |
ACの登記の先後で勝ちが決まる (先に登記した方が勝ち) |
02 解除と登記
売買契約が成立しても、相手方(買主側)が代金を支払わなかった場合には、売主は契約を解除することができます。
そして、契約を解除して、契約がなかったことになれば、「取消し」の場合と同様に、第三者が存在した場合、元々の所有者と第三者のどちらを所有者とするのかが問題となります。
結論から言うと「契約の解除」に第三者が絡んでいる場合、『解除前の第三者』と『解除後の第三者』のどちらのケースでも、登記している方が勝ちです。
このことついてをイラスト図解付きでわかりやすく解説します。
a.解除前・解除後の第三者
【契約の解除 前後の事例】
2⃣Aが契約を解除しました。
・Cに登記がある場合は、AはCに対して所有権を主張できません。
・Aにまだ登記が残っている場合は、AはCに対して所有権を主張できます。
以上、
a.取消し前の第三者
詐欺による意思表示の取消し
制限行為能力・強迫を理由とした取消し
b.取消し後の第三者
c.取消し前・後の第三者まとめ
02 解除と登記
a.解除前・解除後の第三者