今回の記事は、憲法の人権についての、
01 人権の分類
02 人権の享有主体
02 人権の享有主体
・・・についてを、イラスト図解付きで、くわしくまとめています。
01 人権の分類
人権とは、人が生まれながらにして持つ権利のことです。
そして、人権は次の4つの種類に分類されます。
・自由権
・社会権
・参政権
・受益権
・社会権
・参政権
・受益権
この4つの人権についてまとめた表が次のとおりです。
自由権 | ・精神の自由 | 表現の自由,学問の自由,信教の自由等 |
・経済的自由 | 職業選択の自由等 経済活動を行う自由 | |
・人身の自由 | 奴隷的拘束からの自由等 国家から不当に身体を拘束されない自由 | |
社会権 | 生存権,教育を受ける権利等 →社会的弱者が、人として最低限の生活を送れるよう国家に一定の配慮を求める権利 |
|
参政権 | 被選挙権,公務員の選定・罷免権 →国民が自己の属する国の政治に参加する権利 |
|
受益権 | 裁判を受ける権利等 →人権の保障を確実なものとするために、国に一定の行為を求める権利 |
02 人権の享有主体
人権の享有主体とは、人権が保障される主体(例:人)のことです。
「主体」の中には、人はもちろん、法人や外国人も含まれます。
そしてここでは、人権が各主体に対して、どの程度保障されるのかをまとめています。
a.法人の人権
人権は、人が生まれながらにして持っている権利ですが、「人=自然人」だけではなく、「法人」についても、権利の性質上可能な限り、人権が保障されます。
この「法人の人権」に関する判例をわかりやすくまとめています。
八幡製鉄政治献金事件(最大判昭45.6.24)
【事案】
八幡製鉄の代表取締役が、会社名で「特定の政党」に政治献金をしたことから、株主が、この代表取締役の責任を追求する訴訟を提起し、『会社名での特定の政党への政治献金』は、会社の目的の範囲外の行為であり、無効ではないかと争われた。
八幡製鉄の代表取締役が、会社名で「特定の政党」に政治献金をしたことから、株主が、この代表取締役の責任を追求する訴訟を提起し、『会社名での特定の政党への政治献金』は、会社の目的の範囲外の行為であり、無効ではないかと争われた。
【争点】
株式会社が、政治献金することが認められるか。
株式会社が、政治献金することが認められるか。
【判旨】
会社は、国や政党の特定の政策を支持するなどの政治的行為をなす自由を有する。
→政治献金も政治的行為をなす自由の一環として認めらる。
会社は、国や政党の特定の政策を支持するなどの政治的行為をなす自由を有する。
→政治献金も政治的行為をなす自由の一環として認めらる。
南九州税理士会政治献金事件(最判平8.3.19)
【事案】
強制加入団体である税理士会が、会の決議に基づいて、税理士会を業界に有利な方向に改正するための工作資金として、会員から特別会費を徴収し、それを「特定の政治団体」に寄付した行為が、税理士会の目的の範囲外の行為であり、無効ではないかと争われた。
強制加入団体である税理士会が、会の決議に基づいて、税理士会を業界に有利な方向に改正するための工作資金として、会員から特別会費を徴収し、それを「特定の政治団体」に寄付した行為が、税理士会の目的の範囲外の行為であり、無効ではないかと争われた。
【争点】
税理士会が、政治団体に寄付することはできるか。
税理士会が、政治団体に寄付することはできるか。
【判旨】
税理士会が強制加入団体である以上、その会員には実質的には脱退の自由も認められておらず、様々な思想・信条を有する者が存在することが予定されている。
税理士会が政党などの政治団体に金員の寄付をすることは、税理士会の目的の範囲外の行為として無効である。
税理士会が強制加入団体である以上、その会員には実質的には脱退の自由も認められておらず、様々な思想・信条を有する者が存在することが予定されている。
税理士会が政党などの政治団体に金員の寄付をすることは、税理士会の目的の範囲外の行為として無効である。
上記の2つの判例の「八幡製鉄政治献金事件」と「税理士会政治献金事件」の大きな違いとしては、
・株式会社の株主には脱退の自由があり、政治献金も営利活動の一環とされ、目的の範囲内の活動として適法とされました。
・税理士会の会員には脱退の自由は無く、政治献金は会員の指導とは関係がないということで、目的の範囲外の活動として違法とされました。
b.外国人の人権
憲法第3章は「国民の権利及び義務」とタイトルされていますが、外国人についても、権利の性質上、日本国民のみをその対象としている場合を除いて、人権が保障されるとしています。
ここから、「外国人の人権」に関する判例をわかりやすくまとめています。
マクリーン事件(最大判昭53.10.4)
【事案】
アメリカ人のマクリーン氏が、日本に入国してから1年後に在留期間更新申請をしたところ、法務大臣は、マクリーン氏の在留中の政治活動を理由に、更新を不許可とした。
そこで、この更新不許可の処分が、政治活動の自由を侵害して違法ではないかが争われた。
アメリカ人のマクリーン氏が、日本に入国してから1年後に在留期間更新申請をしたところ、法務大臣は、マクリーン氏の在留中の政治活動を理由に、更新を不許可とした。
そこで、この更新不許可の処分が、政治活動の自由を侵害して違法ではないかが争われた。
【争点】
・外国人に政治活動の自由が保障されるか。
・外国人に在留する権利・引き続き在留することを要求する権利は保障されるか。
・外国人に政治活動の自由が保障されるか。
・外国人に在留する権利・引き続き在留することを要求する権利は保障されるか。
【判旨】
・政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみ、これを認めることが相当でないものを除き、保障される。
・外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものではないことはもちろん、在留外国人に「在留の権利・引き続き在留することを要求する権利」は保障されない。
・政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみ、これを認めることが相当でないものを除き、保障される。
・外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものではないことはもちろん、在留外国人に「在留の権利・引き続き在留することを要求する権利」は保障されない。
森川キャサリーン事件(最判平4.11.16)
【事案】
日本に入国し、定住しているアメリカ人の森川キャサリーン氏が、韓国へ旅行するため再入国許可申請をしたところ、不許可とした。
そこで、この不許可処分が、再入国の自由を侵害して違法ではないかが争われた。
日本に入国し、定住しているアメリカ人の森川キャサリーン氏が、韓国へ旅行するため再入国許可申請をしたところ、不許可とした。
そこで、この不許可処分が、再入国の自由を侵害して違法ではないかが争われた。
【争点】
・わが国に在留する外国人は、外国へ一時旅行する自由を保障されているか。
・再入国の自由は保障されているか。
・わが国に在留する外国人は、外国へ一時旅行する自由を保障されているか。
・再入国の自由は保障されているか。
【判旨】
わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではなく、再入国の自由も保障されない。
わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではなく、再入国の自由も保障されない。
逆に、外国人の、「日本から出国する自由」は保障されています。
(最大判昭32.12.25)
これは、憲法上、外国移住の自由が保障されていることからきています。
塩見訴訟(最判平1.3.2)
【事案】
外国人が、知事に対して、(旧)障害福祉年金の請求を行ったところ、請求が却下された。
そこで、この請求却下処分が憲法14条,25条に違反しないかが争われた。
外国人が、知事に対して、(旧)障害福祉年金の請求を行ったところ、請求が却下された。
そこで、この請求却下処分が憲法14条,25条に違反しないかが争われた。
【結論】
合憲
合憲
【判旨】
・社会保障上の施策において、在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の在しない限り、その政治的判断によりこれを決定することができる。
・限られた財源のもとで福祉的給付を行うにあたり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。
・社会保障上の施策において、在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の在しない限り、その政治的判断によりこれを決定することができる。
・限られた財源のもとで福祉的給付を行うにあたり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。
外国人の管理職就任権(最大判平17.1.26)
【事案】
外国人である東京都の職員が、管理職選考試験を受験しようとしたところ、日本国籍を有していないことを理由に拒否された。
そこで、この拒否処分が法の下の平等を定めた憲法14条1項に反するのではないかが争われた。
外国人である東京都の職員が、管理職選考試験を受験しようとしたところ、日本国籍を有していないことを理由に拒否された。
そこで、この拒否処分が法の下の平等を定めた憲法14条1項に反するのではないかが争われた。
【結論】
合憲
合憲
【判旨】
・日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置をとることは許される。
・合理的な理由に基づいて、「日本国民である職員」と「在留外国人である職員」とを区別するものである。
→このような措置は、憲法14条1項に違反するものではない。
・日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置をとることは許される。
・合理的な理由に基づいて、「日本国民である職員」と「在留外国人である職員」とを区別するものである。
→このような措置は、憲法14条1項に違反するものではない。
外国人の人権保障
外国人の人権が保障されるかどうかをまとめた表が次のとおりです。
外国人に保障される人権 | 外国人に保障されない人権 | |
・自由権 | ・入国,再入国の自由 | |
・受益権 | ・選挙権 | 国政選挙権 ✖ |
地方選挙権 ✖ 憲法で保障されないが、法律で永住者等に地方選挙権を付与する措置を講ずることはできる(最判平17.1.26) |
||
・社会権 | 外国人の社会権 ✖ 詳しくは『塩見訴訟 最判平1.3.2』へ |
|
・管理職就任権 | 外国人の管理職就任権 ✖ 詳しくは『外国人管理職最大判平17.1.26』へ |
以上、憲法/人権の分類と人権の享有主体についての、
01 人権の分類
02 人権の享有主体
a.法人の人権
八幡製鉄政治献金事件(最大判昭45.6.24)
南九州税理士会政治献金事件(最判平8.3.19)
b.外国人の人権
マクリーン事件(最大判昭53.10.4)
森川キャサリーン事件(最判平4.11.16)
塩見訴訟(最判平1.3.2)
外国人の管理職就任権(最大判平17.1.26)
外国人の人権保障
02 人権の享有主体
a.法人の人権
八幡製鉄政治献金事件(最大判昭45.6.24)
南九州税理士会政治献金事件(最判平8.3.19)
b.外国人の人権
マクリーン事件(最大判昭53.10.4)
森川キャサリーン事件(最判平4.11.16)
塩見訴訟(最判平1.3.2)
外国人の管理職就任権(最大判平17.1.26)
外国人の人権保障
・・・でした。お疲れ様でした。