今回の記事は、「親権」に関する、
02 親権者
03 親権の内容
04 利益相反行為
05 親権の喪失
01 親権とは?
「親権」とは、親が子を監護し、教育し、財産を確保する職分のことをいいます。
成年に達しない子は、父母の「親権」に服します。(818条1項)
また、子が「養子」であるときは、養親の「親権」に服します。(818条2項)
「養子」についてくわしくは下記のリンクからどうぞ▼
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02 親権者
「親権を有する者」のことを『親権者』といいます。
原則として、「親権」は父母の婚姻中は、”父母が共同して”行います。(818条3項本文)
例外として、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行うことになります。
(818条3項但書)
a.親権者の変更
例えば、父母の離婚により「親権者」が変更になることがあります。
【親権者の変更ポイントまとめ表】
親権者 | その後、変更する場合 | |
嫡 出 子 |
【父母が離婚した場合】 協議により「親権者」を決める |
親権者変更の審判 家庭裁判所で決める ※父母の協議による変更は不可 |
【子の出生前に離婚した場合】 親権者は「母」 |
①父母の協議or家庭裁判所の審判 ②親権者変更の審判 |
|
非 嫡 出 子 |
【父が認知した子】 親権者は「母」 |
①父母の協議or家庭裁判所の審判 ②親権者変更の審判 |
『親権者変更の審判』とは? 子の利益のため必要があると認められるときは、家庭裁判所は「子の親族の請求」によって親権者を他の一方に変更することができます。(819条4項) |
03 親権の内容
「親権」の内容としては、次の2つがあります。
b.財産管理
a.身上監護
親権を行う者は、子の利益のために子の「監護」及び「教育」をする権利を有し、義務を負います。
(820条)
b.財産管理
「親権」を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について、その子を代表(代理)します。
このような権限を『法定代理権』といいます。
また、親権者に法定代理権が認められていることから、親権者(例:未成年者の両親)のことを、
法定代理人といいます。
親権者(例:未成年者の両親)=法定代理人
「未成年者の法定代理人」について、くわしくは下記のリンクからどうぞ▼
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04 利益相反行為
「親権者」である「未成年者の親」は、「法定代理人」として未成年の子を代理する権限を持ちます。
ですが、親が未成年の子を代理する権限を持つことで、親と子の利益が相反するケースが出てきます。
この「親と子の利益が相反する」場合のことを『利益相反』といいます。
そして、親と子の利益が相反する行為は、『利益相反行為』にあたり民法で禁止されています。
(826条1項)
このような「親権を行う父又は母」と「子」の利益が相反する利益相反行為となってしまう場合には、親権を行う者は、その子のために、『特別代理人』を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。
a.例-遺産分割協議
「親」と「子」の「利益相反行為」の例として『遺産分割協議』があります。
【事例】
この場合に、母Bが、子Cを代理して『遺産分割協議』をしてしまうと、「利益相反行為」となってしまい、無効です。
そして、「母B」と「子Cの特別代理人」との間で、遺産分割協議を行いました。
この場合、仮に母Bが子Cの有利になるような「遺産分割協議」をしたとしても、利益相反行為になってしまいます。
そして、「利益相反行為」をしたときは、「無権代理行為」をしたとして扱われるので、子Cが成年になった後に、「追認」しない限り、「遺産分割協議」は有効とはなりません。
(最判昭46.4.20)
「無権代理行為」と「追認」に関してくわしくは下記のリンクからどうぞ▼
b.利益相反行為に当たる?当たらない?
” 外形的客観的 ” に考察し判断するということは、「親権者の動機や意図」をもって判断しないということです。
利益相反行為に当たるか否かについての判例をいくつかまとめた表が以下のとおりです。
【利益相反行為に当たる?当たらない?】
利益相反行為に当たる | ①第三者の金銭債務について、親権者が自ら連帯保証をすると共に、「子の代理人」として同一債務について、連帯保証をし、かつ、「親権者と子が共有する不動産」に抵当権を設定する行為(最判昭43.10.8) |
②子の学費のために、母が「自分名義」で借金をし、子の土地に抵当権を設定する行為 | |
利益相反行為に 当たらない |
③母の遊興費のために、母が「子の名義」で借金をし、子の土地に抵当権を設定する行為 |
④親権者が自らあらかじめ「相続放棄」をしている場合、又は、 自ら「相続放棄」をすると同時に、「子全員の相続放棄」を代理する行為 (最判昭53.2.24) |
①利益相反に当たる-親が連帯保証・子と共有不動産に抵当権
そして、親Aは、子Bを代理し、子Bとして連帯保証をした。
さらに、親Aと子Bの共有名義の不動産に抵当権設定を代理した。
→これは、親Aと子Bの『利益相反行為』に当たる。
②利益相反に当たる-子の学費のため母名義の借金 子に抵当権
→これは、母Aと子Bの『利益相反行為』に当たる。
たとえ借金の動機は「子のためのお金」だったとしても、 ” 外形的客観的 ” に見れば、「親の借金」なのに、「子の不動産に抵当権」を設定していますので、これは ” 外形的客観的 ” に判断されて『利益相反行為』に当たります。
③利益相反に当たらない-母の遊興費のため子名義の借金 子に抵当権
その上、「子B名義の土地」に抵当権を設定を代理する行為。
→これは、母Aと子Bの『利益相反行為』に当たりません。
たとえ借金の動機は「自分(母)自身の遊興費」だったとしても、 ” 外形的客観的 ” に見れば、「子の借金」なので、「子の不動産に抵当権」を設定しても、これは ” 外形的客観的 ” に判断されて『利益相反行為』には当たりません。
④利益相反に当たらない-親が相続放棄し、子全員にも相続放棄を代理
→これは、母Aと子B・C・Dの『利益相反行為』に当たりません。
こういった場合の多くは、故人に多大な借金があり、母親としては、自分も子ども達にも、借金を背負わせないための配慮としてするケースがほとんどなので、利益相反行為には当たらないとされています。
『相続する』といっても、「金銭や不動産などのプラスの財産」だけではなく、「借金などのマイナスの財産」も両方相続してしまうことになりますから。
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05 親権の喪失
児童虐待の防止を図り、児童の権利利益を擁護する観点から、
・親権停止の審判(834条の2)
・・・という制度が規定されています。
これらの要件については、次のとおりです。
【親権喪失の要件】
親権喪失の審判 | 親権停止の審判 | |
積極的要件 | ①父又は母による「親権の行使」が著しく「困難又は不適当」であることにより「子の利益」を著しく害する |
①父又は母による「親権の行使」が |
②「子」「その親族」「未成年後見人」「未成年後見監督人」又は「検察官」の請求があること | ||
消極的要件 | 2年以内にその原因が消滅する見込みがないこと | - |
以上、親子Ⅲ-「親権」について、
02 親権者
a.親権者の変更
03 親権の内容
a.身上監護
b.財産管理
04 利益相反行為
a.例-遺産分割協議
b.利益相反行為に当たる?当たらない?
05 親権の喪失
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