社会権-生存権,教育を受ける権利,労働基本権

社会権-生存権・教育を受ける権利・労働基本権 社会権

「社会権」も「人権」ですが、同じ「人権」でも、
・「自由権」は「国から◯◯されない権利」
・「社会権」は「国に◯◯してもらう権利」・・・となります。

憲法の中での位置づけとしては、次のようになります。

憲法/人権/社会権

社会権とは、社会的弱者が、人に値する生活を送れるように、国家に一定の配慮を求める権利のことです。
そして、「社会権」には次の3つがあります。

・生存権
・教育を受ける権利
・労働基本権
今回の記事は、この「社会権」について、わかりやすく解説しています。

01 生存権

憲法25条(生存権、国の生存権保障義務)
1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に務めなければならない。

25条1項では、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しています。
福祉国家の理想に基づき、社会的・経済的弱者を保護するために保障されています。

「生存権」に関する判例には『朝日訴訟』があります。

a.朝日訴訟

朝日訴訟(最大判昭42.5.24)

【事案】
入院療養中のため生活・医療扶助を受けていた朝日氏は、兄からの仕送りがあるという理由で、これらの公的扶助を打ち切られた。
このことについて、健康で文化的な最低限度の生活水準を維持するに足りるかどうかが争われた。
朝日訴訟
【結論】
・訴え却下
・厚生大臣(当時)の認定判断は、違法ではない。
【争点】
憲法25条は、どのような性格の規定なのか?
【判旨】
①生存権の法的性格
25条の規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して、具体的な権利を賦与したものではない。
②健康で文化的な最低限度の生活の認定判断
何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、厚生大臣(当時)の裁量に委ねられており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法ということにはならない。
③司法審査の対象
ただし、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等、憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、裁量権の限界を超えた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となり得る。

b.堀木訴訟

堀木訴訟(最大判昭57.7.7)

【事案】
(旧)障害福祉年金と児童扶養手当との供給を禁止することが、違憲ではないかと争われた。
【結論】
合憲
【判旨】
①憲法25条1項・2項の意義
25条1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的にこのような義務を負っていることを規定したものではない。
②司法審査の対象
どのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない。

上記の「朝日訴訟」にも「堀木訴訟」にも『◯◯の裁量に委ねられており』という文言が出てきます。
これは、『裁判所は余計な口出しをせず、◯◯の判断に任せる』という意味になります。

そして、『よっぽど裁量の逸脱・濫用と見られる場合には、裁判所が口を出しますよ』みたいな感じです。

02 教育を受ける権利

憲法26条(教育を受ける権利、教育の義務、義務教育の無償)
1項 すべて国民は、法律で定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

教育は、個人が人格を形成するため、また、人が豊かに生きるために必要不可欠なものです。
なので、憲法は、『教育を受ける権利』を保障しています。

a.子どもの学習権

26条1項では、「すべて国民は」とされていますが、特に、自分の意思一つでは教育を受けることができない子どもが、国に適切な教育を求める権利(子どもの学習権)という意味合いが強くなっています。

【教育を受ける権利とは?】
◆子どもの学習権→子どもが等しく教育を受ける権利、大人にそれを要求する権利
◆社会権的意義→教育条件の整備
◆参政権的意義→主権者の育成
◆自由権的意義→国家の干渉の排除

現代では、義務教育って当たり前なんじゃないの?と思えるかもしれませんが、戦前は、子どもにも家業を手伝わせたり、外へ丁稚奉公に出したり、要するに子どもだろうと家にお金を入れろみたいな時代がありました。
つまり、子どもを学校に行かせたり、教育を受けることができる子どもは、限られた身分の子どものみの時代がありました。

旭川学テ事件(最大判昭51.5.21)

【事案】
文部省(現文部科学省)の実施した全国一斉学力テストに反対する教師が、学テの実施を阻止しようとして公務執行妨害罪等で起訴され、裁判の過程で、文部省による学テの実施が憲法26条に反しないかが争われた。
旭川学テ事件-合憲
【結論】
合憲
【判旨】
①子どもの学習権
26条の規定の背後には、自ら学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している。
②教育権の所在
親や教師だけでなく、国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立・実施すべく、また、しうる者として、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有する。
③よって、学力テストは適法である。

要するに、子どもの教育権は、誰かが独占するものではなく、親・教師・国がそれぞれの役割分担に応じてすべきことだとされています。

b.義務教育

憲法上規定されているのは、保護する子女に普通教育を受けさせる義務です。
つまり、” 教育の義務を背負っているのは、子どもではなく、親のほう ” です。

また、26条2項では、「義務教育は、これを無償とする」と規定されていますが、これは授業料の無償という意味であって、仮に教科書代金を徴収しても、憲法には違反しません。

03 労働基本権

憲法28条(勤労者の団結権・団体交渉権その他団体行動権)
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

使用者(会社側)と労働者の関係では、労働者が弱い立場なので、使用者と労働者を対等の立場に立たせて、労働者を保護するため、『労働基本権』が認められています。

a.労働基本権

【労働基本権の内容】

団結権 労働条件の維持・改善のために、使用者と対等に交渉する労働者の団体(労働組合)を結成したり、それに参加する権利
団体交渉権 労働組合が使用者に対して、労働条件について交渉する権利
団体行動権(争議権) 使用者に労働者の要求を認めさせるため、争議行為(ストライキ=就労の放棄)を行う権利

三井美唄事件(最大判昭43.12.4)

【事案】
労働組合は、市議会議員選挙において、統一候補を擁立することを決定し、これに対抗して立候補しようとした組合員に対して、立候補を断念するよう説得したが、この組合員がこれに応じなかったため、組合員としての権利を1年間停止する処分をした。
そこで、組合員は、当該処分が28条の保障する労働組合の統制権を超えるものであり、違法であるとして争った。
三井美唄事件-違法
【結論】
違法
【判旨】
①労働組合の統制権と憲法28条
労働組合は、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内においてその組合員に対する統制権を有する。
②労働組合の統制権と組合員の立候補の自由
労働組合は、統一候補以外の組合員に対し、立候補を思いとどまるよう勧告又は説得をすることはできる。
しかし、勧告又は説得の域を超え、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由にこの組合員を「統制違反者」として処分することは、労働組合の統制権の限界を超えるものとして違法となる。

b.公務員の労働基本権

公務員の労働基本権-ストライキ等認められない

公務員の労働基本権を無制限に認めてしまうと、国民の生活に大きく不利益になってしまいます。

たとえば、消防職員がストライキ中だからといって、火災があっても消火活動をしなければ、国民の生活に大きな不利益が生じてしまいます。

そこで、同じ公務員でも、公務員の労働基本権が保障されるorされないが違っています。

【公務員の労働基本権】◯:保障される  ✖:保障されない

  団結権 団体交渉権 団体行動権
(ストライキ権)
警察職員・消防職員・自衛隊員
海上保安庁・刑事施設に勤務する職員
非現業の一般の公務員
(団体協約締結権は保障されない)
現業の公務員

全農林警職法事件(最大判昭48.4.25)

【事案】
争議行為を禁止し、そのあおり行為を処罰の対象としている国家公務員法の合憲性が争われた。
【結論】
合憲
【判旨】
①公務員の労働基本権の制限
28条の労働基本権の保障は、公務員に対しても及ぶが、この労働基本権は、勤労者をも含めた国民全体の共同利益の保障という見地からする制約を免れない。
公務員の地位の特殊性と職務の公共性から、その労働基本権に対し、必要やむを得ない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由がある。
②政治的目的と争議行為の禁止
政治的目的のために争議行為を行うことは、私企業の労働者であるか、公務員であるかを問わず憲法28条の保障を受けないから、これを規制することも許される。
③公務員の争議行為の禁止
国家公務員法が、公務員の争議行為及びそのあおり行為等を禁止することは、勤労者をも含めた国民全体の共同利益の見地からする、やむを得ない制約であって、憲法28条に違反するものではない。

以上、社会権に関する、

01 生存権
 a.朝日訴訟
 b.堀木訴訟
02 教育を受ける権利
 a.子どもの学習権
   旭川学テ事件(最大判昭51.5.21)
 b.義務教育
03 労働基本権
 a.労働基本権
   三井美唄事件(最大判昭43.12.4)
 b.公務員の労働基本権
   全農林警職法事件(最大判昭48.4.25)
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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