債権の消滅Ⅰ-弁済,代物弁済

債権の消滅Ⅰ-弁済,代物弁済 債権の消滅

今回の記事は、債権の消滅Ⅰとして、

01 弁済
 a.弁済の提供
   弁済の提供方法-現実の提供・口頭の提供
   重要判例-口頭の提供すら不要
 b.第三者弁済
   第三者弁済が有効とならない場合
 c.求償権と弁済による代位
 d.受領権者としての外観を有する者に対する弁済
02 代物弁済
・・・についてです。

01 弁済

弁済-債権の給付内容を実現すること

弁済とは、債権の給付内容を実現することです。

具体的には、例えば、
・売買契約により発生した「代金債権」は、債務者が実際に代金を支払ったときに消滅する
・売買契約により発生した「引渡し債権」は、債務者が引渡しをしたときに消滅する
・・・このような行為を『弁済』といいます。

a.弁済の提供

「弁済の提供」とは、債務者側で、なし得る必要な準備行為をして、債権者に対し受領を求める行為のことです。

仮に、債務者が「弁済の提供」をしたにもかかわらず、債権者が受け取らなかった場合は、

・債権は消滅しないが、
・債務者は、「弁済の提供の時」から『債務を履行しないこと』によって生ずる責任を免れます。
(492条)
(債務者は、債務不履行責任を負わないことになります。)
したがって、債務者は「損害賠償」や「強制執行」を請求されずに済みます。

弁済の提供方法-現実の提供・口頭の提供

「弁済の提供」の方法としては、次のようになります。

原則 現実の提供(債務の本旨に従って現実に提供する)が必要です(493条本文)
例外 ・債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合→「口頭の提供」をすれば足りる
※「口頭の提供」:弁済の準備をしたことを通知して、その受領を催告すること

・弁済等、債務の履行じたいに、債権者の行為が必要な場合→「口頭の提供」をすれば足りる
現実の提供・口頭の提供

重要判例-口頭の提供すら不要

重要判例(最大判昭32.6.5)で、「口頭の提供」すら不要とされた判例があります。
(※過去問出題:平30-問31-肢4)

【重要判例-最大判昭32.6.5】
債権者が契約の存在を否定する等、弁済を受領しない意思が明確と認められるときは、債務者は口頭の提供をしなくても債務不履行責任を免れる。

b.第三者弁済

「第三者弁済」とは、第三者が「他人の債務」を自己の名において、弁済することです。

債権者にしても、別に債務者以外の者に弁済してもらっても問題ないと考えられ、民法でも、「第三者弁済」を原則として認めています。(474条1項)

第三者弁済が有効とならない場合

「第三者弁済」は、原則として有効ですが、次のような場合には、第三者弁済が有効とはならないケースもあります。

1 債務の性質が許さない場合(474条4項)
 例:その画家により「絵を描く債務」、その学者による「講演をする債務」
2 当事者が反対の意思表示をした場合(474条4項)
3 弁済をするについて、” 正当な利益を有する者でない第三者 ” が債務者又は債権者の意思に反して弁済した場合(474条2項本文・3項本文)


※債務者の意思に反するときでも、そのことを債権者が知らずに受領してしまった場合は、弁済は有効となります。(474条2項ただし書)
※債権者の意思に反するときでも、第三者が債務者の委託を受けて弁済することを、債権者が知っていたときは、弁済は有効となります。(474条3項ただし書)

※「正当な利益を有する者」:保証人,物上保証人等
※「正当な利益を有しない者」:ただ親子だからとか友人だからでは、正当な利益は有しません。

c.求償権と弁済による代位

保証人が、債権者に第三者弁済した場合には、債務者に対して「求償権」を取得します。
さらに、債権者が「抵当権」を有していたなら、その「抵当権」を保証人が弁済により「代位」することができます。

この「求償権の取得」と「弁済による代位」について、事例を踏まえてわかりやすく解説します。

1️⃣Bは、Aから1,000万円を借り入れ、これを担保するためB所有の土地に抵当権を設定し、さらに、Cが保証人となる契約を結んでいました。
1️⃣Bは、Aから1,000万円を借り入れ、これを担保するためB所有の土地に抵当権を設定し、さらに、Cが保証人となる契約を結んでいました。
2️⃣その後、保証人Cは債務者Bに代わって、債権者Aに対して貸金債務を弁済しました。
ここで、保証人Cは、債務者Bに対して「求償権」を取得します。
2️⃣その後、保証人Cは債務者Bに代わって、債権者Aに対して貸金債務を弁済しました。
ここで、保証人Cは、債務者Bに対して「求償権」を取得します。
3️⃣保証人Cが弁済したので、元々は債権者Aが持っていた「1,000万円の債権」は、保証人Cに移転します。
さらに、債権者Aは「B所有の土地の抵当権」も持っていたので、この「抵当権」も、保証人Cに移転します。
これを、「弁済による代位」といいます。
3️⃣弁済による代位で、貸金債権も抵当権も保証人に移転する

d.受領権者としての外観を有する者に対する弁済

受領権者としての外観を有する者に対する弁済

通常、債務者は、受領権限のない者(債権者以外の者)に対して弁済をしても、無効となります。
そして、真の債権者から請求されれば、債務者は再度弁済をしなければならないのが原則です。

しかし、債権者・受領権者としての外観を有する者(債権者に見える者)に対して弁済した場合には、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がないときに限り、その効力が有効となります。(478条)

02 代物弁済

代物弁済-他の給付の履行によって債権が消滅する

弁済者が債権者との間で、本来の給付に代えて他の給付をすることによって、本来の債権を消滅させる債権者と弁済者との契約のことを、「代物弁済」といいます。

この「代物弁済」は「弁済」と同一の効力を有します。(482条)

以上、債権の消滅Ⅰとして、

01 弁済
 a.弁済の提供
   弁済の提供方法-現実の提供・口頭の提供
   重要判例-口頭の提供すら不要
 b.第三者弁済
   第三者弁済が有効とならない場合
 c.求償権と弁済による代位
 d.受領権者としての外観を有する者に対する弁済
02 代物弁済
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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