不動産物権変動Ⅲ 取得時効と登記,相続・遺産分割と登記 

不動産物権変動Ⅲ-取得時効と登記,相続・遺産分割と登記 物権総則

今回の記事は、不動産物権変動Ⅲとして、

01 取得時効と登記
 a.時効完成時の元の所有者
 b.時効完成前の第三者
 c.時効完成後の第三者
02 相続・遺産分割と登記
 a.相続と登記
 b.遺産分割と登記
・・・についてをイラスト図解付きでわかりやすく解説しています。

「不動産物権変動」については、この記事以外に、ⅠとⅡがあります。

【不動産物権変動Ⅰ】
物権変動と登記,177条の第三者
【不動産物権変動Ⅱ】
取消しと登記,解除と登記
今回は、『不動産物権変動Ⅲ』です。

01 取得時効と登記

「時効取得の制度」とは、たとえば、Aが所有する不動産をBが20年間ずっと占有していたとします。
すると、Bはその不動産を時効取得することができるという制度のことです。

不動産を時効取得した場合にも、物権変動は起こります。
この「取得時効と登記」について、

a.時効完成時の元の所有者
b.時効完成前の第三者
c.時効完成後の第三者
・・・をイラスト図解付きでわかりやすく解説します。

「取得時効」について、詳しく知りたい方は次のリンクからどうぞ▼

a.時効完成時の元の所有者

不動産を時効取得した場合に物権変動が起こり、

・時効が完成した時の「元の所有者」
・時効の完成により不動産を取得した「占有者」

・・・の二者の関係について、イラスト図解付きでわかりやすく解説します。

1⃣A所有の土地に、Bが勝手に自分で家を建て、20年間土地を占有し続けていました。
不動産物権変動-取得時効と登記①Aの土地にBが20年間占有し続けていた。
2⃣そして、時効期間が完成し、土地を時効により取得した占有者Bは、元の所有者Aに対して、登記なくして所有権を主張できます。
不動産物権変動-取得時効と登記②占有者Bは、登記なくして元の所有者Aに対抗できる

土地を時効により取得した占有者Bは、元の所有者Aに対し、登記なくして所有権を対抗できます。

b.時効完成前の第三者

不動産を時効取得した場合に物権変動が起こり、そこに第三者が絡んでいた場合に、

・時効完成前に、元の所有者から「不動産を購入した第三者」
・時効の完成により不動産を時効取得できる状態の「占有者」

・・・の二者の関係について、イラスト図解付きでわかりやすく解説します。

1⃣土地の所有者Aが、第三者Cに土地を売却した後、占有者Bがこの土地の所有権を時効により取得しました。
土地の所有者Aが、第三者Cに土地を売却した後、占有者Bがこの土地の所有権を時効により取得しました。
2⃣土地を時効により取得した占有者Bは、取得時効が完成する前に譲り受けたCに対し、登記なくして所有権を主張できます。
土地を時効により取得した占有者Bは、取得時効が完成する前に譲り受けたCに対し、登記なくして所有権を主張できます。

時効取得者Bが、時効完成前の第三者Cから土地を譲り受けたのと、同視できるので、Bは登記なくして所有権を対抗できるわけです。

c.時効完成後の第三者

不動産を時効取得した場合に物権変動が起こり、そこに第三者が絡んでいた場合に、

・時効完成後に、不動産を時効取得できる状態なのに、まだ登記をしていない「占有者」
・時効完成後に、元の所有者から「不動産を購入した第三者」

・・・の二者の関係について、イラスト図解付きでわかりやすく解説します。

1⃣占有者Bが「A所有の土地」の所有権を時効により取得した後、Bがその登記をしない間に、元の所有者Aがこの土地を第三者Cに売却しました。
1⃣占有者Bが「A所有の土地」の所有権を時効により取得した後、Bがその登記をしない間に、元の所有者Aがこの土地を第三者Cに売却した
2⃣土地を時効により取得した占有者Bは、時効完成後に土地を譲り受けたCに対して、登記がなければ、時効取得をもって対抗することはできません。
土地を時効により取得した占有者Bは、時効完成後に土地を譲り受けたCに対して、登記がなければ、時効取得をもって対抗することはできない

これは、元の所有者Aを起点とした「時効取得者・占有者B」と「時効完成後の譲受人C」への二重譲渡類似の関係になるので、登記(対抗要件)が必要となってくるわけです。

02 相続・遺産分割と登記

不動産を「相続」した場合や「遺産分割」をした場合にも、物権変動は起こります。
この「相続や遺産分割と登記」について、わかりやすく解説します。

a.相続と登記

【事例】
Aが死亡し、BとCが「Aの遺産である土地」を共同相続しました。
その土地のB・Cそれぞれの相続分は「1/2」ずつです。
ところが、Cが勝手に「単独で土地所有権を取得した登記」を入れてしまいました。
その上、Cは土地全部をDに売却してしまいました。さらに、Dはその登記を入れてしまいました。

1⃣Aが死亡し、BとCが土地を1/2ずつ共同相続しました。
ところが、Cが勝手に、単独で取得したとの登記を入れてしまいました。
そして、CはDに土地を売却しました。
Aの相続が開始し、BCが1/2ずつ相続したが、CがDへ全部を売却し、Dは全部登記を備えた
2⃣さらに、Dはその登記を入れてしまいました。
この場合に、他の相続人Bとしては、Dに対して、自己の持ち分(1/2)を登記なくして主張することができます。
Dはその登記を入れてしまいました。
この場合に、他の相続人Bとしては、Dに対して、自己の持ち分(1/2)を登記なくして主張することができます。

Cは、自分の持分(1/2)以外は無権利者です。
その無権利者Cから土地を買い受けたDも、Cの持分(1/2)以外は無権利になります。
なので、Bは、登記がなくてもDに対し、持分1/2の返還を請求できるわけです。

b.遺産分割と登記

【事例】
Aが死亡し、BとCが「Aの遺産である土地」を共同相続しました。
法定相続分は、BC共に、1/2ずつですが、BC間で遺産分割協議をし、Bひとりが単独所有することに決定しました。
ところがその後、Cは自分の法定相続分である持分1/2を、Dに売却してしまいました。
1⃣Aが死亡し、BとCが持分1/2ずつ共同相続し、その後遺産分割協議の結果、Bの単独所有とすることに決定しました。
Aが死亡し、BとCが持分1/2ずつ共同相続し、その後遺産分割協議の結果、Bの単独所有とすることに決定しました。
2⃣ところがその後、Cは自分の法定相続分である持分1/2を、Dに売却してしまいました。
3⃣この場合、遺産分割により相続分(1/2)と異なる権利を取得した相続人Bは、全部の所有権を取得したことを登記をしなければ、Dに対抗できません。
そして、Dも登記してなければ、持分1/2の取得を、Bに対抗できません。
遺産分割により相続分(1/2)と異なる権利を取得した相続人Bは、全部の所有権を取得したことを登記をしなければ、Dに対抗できません。

つまり、BとDは、先に登記したほうが勝ちです。
ここは、「解除と第三者」の関係と同じです。

『不動産物権変動/解除と登記』について、詳しく知りたい方はこちらのリンクからどうぞ▼

以上、

01 取得時効と登記
 a.時効完成時の元の所有者
 b.時効完成前の第三者
 c.時効完成後の第三者
02 相続・遺産分割と登記
 a.相続と登記
 b.遺産分割と登記
・・・でした。お疲れ様でした。
タイトルとURLをコピーしました