動産物権変動-対抗要件,即時取得,盗難・遺失物の特則

動産物権変動-引渡しの種類-占有改定,即時取得,盗品・遺失物の特則 物権総則

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今回の記事は、動産物権変動-対抗要件と即時取得、盗難・遺失物の特則についてです。

動産物権変動-対抗要件

動産の物権変動については、不動産のような『登記制度』がありません。
なので、どうやって所有権を主張できるのかが、問題となります。

この「所有権を主張できる要件」のことを、『対抗要件』といいます。
そして、動産の物権変動の『対抗要件』は「引渡し」です。(178条)

不動産の『登記』や、車・船舶の『登録』があれば、それが対抗要件となりますが、
一般の動産の場合は、取引は頻繁に行われ、いちいち登記・登録していられません。

そこで、動産の場合は、「引渡し」が対抗要件とされています。

対抗要件とは具体的には?

動産物権変動の対抗要件は、「引渡し」ですが、これを具体的にわかりやすく解説します。

①Aは、所持していた時計を、Bに売却しましたが、Bはまだ「引渡し」を受けていませんでした。
②その後、Aは、Cに対してもその時計を売却し、
③Cに時計を引渡しました。
動産物権変動の対抗要件は、引渡し
この場合に、
・「引渡し」を受けていないBは、Cに所有権を主張できず(対抗できない)
・「引渡し」を受けたCは、Bに所有権を主張できます(対抗できる)
この時計の所有権者は、『C』となります。
動産の物権変動では、引渡しを受けた方が所有権を主張できる。

引渡しの種類

動産の引渡しには、次の4つの種類があります。

a.現実の引渡し
b.簡易の引渡し
c.占有改定
d.指図による占有移転
  具体例
a.現実の引渡し 売主Aが所持していた時計を、買主Bに、現実に引渡す。
b.簡易の引渡し AがBに時計を貸していて、時計じたいは、既にBの手元にあったが、Bがその時計をAから売ってもらった場合。
c.占有改定 売主Aから買主Bが、絵画を買ったが、これを引き続き売主Aの手元に保管しておく形をとっている場合。
d.指図による占有移転 Aが所持していた機械は、C倉庫に預けていたが、その機械をBが購入し、Aは「以後その物をBのために占有するよう」Cに命じ、Bがこれを承諾する場合。

a.現実の引渡し(182条1項)

「現実の引渡し」とは、たとえば、
売主Aが所持していた時計を、買主Bに、現実に引渡す方法です。

b.簡易の引渡し(182条2項)

「簡易の引渡し」は、たとえば、
①AがBに時計を貸していて、時計じたいは、既にBの手元にありました。
②そこであらためて、Bがその時計をAから購入した場合の引渡し方法です。

c.占有改定(183条)

「占有改定」とは、たとえば、
①画商AからBが、絵画を購入しました。
②絵画の所有権は、Bに移転しました。
 しかし、絵画じたいは、引き続き、Aの手元に置くという引渡し方法です。

占有改定-AからBが絵画を購入したが、絵画じたいは、そのままAの手元に預かってもらうという引渡し方法

d.指図による占有移転(184条)

「指図による占有移転」とは、たとえば、
Aは、所有する機械を、倉庫業者Cの所で管理・保管させていました。
①その機械を、AからBが購入しました。
②Aは、新・所有者であるBの了承を得て、Cに対し、「今後は、Bのために管理するよう」指図をしました。
③機械の所有権は、AからBへ移転しました。

即時取得

即時取得とは?

即時取得とは、

・前主が無権利者であっても、それを過失なく信じて、動産取引をした者を保護する制度
・権利の外観を信じて、取引した者が、所有権を取得することができる制度。
さらに、事例で解説します。
①Aは自己の所有する絵画を、Bに預けていました。
②しかし、Bは、この絵画を自己の物であるとウソをついて、善意無過失のCに売り渡し、
③引渡してしまいました。
 
即時取得-1無権利者Bから善意無過失Cが売買により引渡しを受けた
この場合に、
◆真の所有者でない者(無権利者)を過失なく信じて、動産取引をしてしまった者を、保護する制度
Cは、絵画の所有権を取得することができるので、Aは、所有権に基づく返還請求はできない。
というような制度が、「即時取得」制度です。

即時取得の要件

即時取得の要件としては、

①動産であること
 →登記・登録制度のない動産
②有効な「取引行為」であること
 →制限行為能力者,無権代理行為は除く
③前主は無権利者・無権限者で、占有していること
④平穏・公然・善意・無過失であること
⑤前主の占有を取得すること
 →引渡しを受けること

盗難・遺失物の特則

「即時取得の目的物」が、「盗品or遺失物」だった場合には、特則があります。
①Bは、Aのバッグを盗み出しました。
②Bは、盗んだバッグを、善意無過失のCに売り渡しました。
 ここで、Cは、即時取得が成立しました。
③Aは、「盗難・遺失の日」から「2年間」は、Cに対して、回復請求することができます。

競売or公の市場で買った場合の即時取得者の保護

即時取得が成立する場合でも、「即時取得者」が

・競売
・公の市場

・・・で、即時取得の目的物を購入した場合には、「即時取得者」を保護する制度があります。

真の所有者は、即時取得者に対して、即時取得者が支払った代価を弁償しなければ、回復請求できません。

以上、本日の記事は、

動産物権変動-対抗要件
 対抗要件とは具体的には?
 引渡しの種類
  a.現実の引渡し(182条1項)
  b.簡易の引渡し(182条2項)
  c.占有改定(183条)
  d.指図による占有移転(184条)
即時取得
 即時取得とは?
 即時取得の要件
盗難・遺失物の特則
 競売or公の市場で買った場合の即時取得者の保護
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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