契約総論Ⅱ-危険負担,解除

契約総論Ⅱ-危険負担,解除 契約総論

今回の記事は、契約総論Ⅱとして、

01 危険負担
 a.目的物の引渡し前の「危険」を負担するのは?
 b.目的物の引渡し後は?
02 解除
 a.解除の種類
   法定解除
 b.債務不履行による解除の要件
 c.解除権の不可分性
 d.解除の効果-原状回復義務
・・・についてです。

01 危険負担

自然災害等、当事者に帰責事由のない場合に、どちらが危険を負担するか。

「危険負担」とは、双務契約をしていて、当事者の帰責事由によらず、一方債務者の債務が履行不能となってしまった場合に、他方の債務者は履行を拒絶できるかという問題のことをいいます。

【危険負担の事例】
AとBは、建物の売買契約を締結しましたが、AがBに建物の引渡しする前に、震災等の売主Aの帰責事由によらず、売主Aの「建物の引渡し債務」が履行不能となってしまいました。
この場合に、買主Bは自己の債務「代金支払い」を拒むことができるかという問題です。

売主と買主のどちらが「危険負担」を負うかという「危険負担の移転」について下記の外部リンクへ▼

a.目的物の引渡し前の「危険」を負担するのは?

引渡し前であれば、代金債権は消滅しないが、買主は代金の支払いを拒むことができる

目的物が当事者双方の帰責事由によらず滅失・損失したとき、目的物を引き渡す前であれば、

・「買主」は、代金の支払いを拒むことができます。
(※売主の代金債権自体は消滅はしないが、買主は代金の支払いを拒むことができる)
⇒つまり、「引渡し前」なら、「売主」が危険負担を負います。

b.目的物の引渡し後は?

売主に帰責事由がなく、引渡し後は、買主は契約解除・代金の支払い拒否もできない。

【引渡し後-「売主」の帰責事由がない場合】

目的物が滅失・損傷した場合の「買主」は、
・契約の解除はできません。
・代金の支払いを拒むこともできません。

02 解除

「解除」とは、契約成立後に発生した「一定の事由」を理由に、契約の効力を一方的に消滅させる意思表示のことです。

たとえば、債務者が債務を履行しない場合に、その契約を打ち切って、他の人と契約を結ぶときに活用されます。

a.解除の種類

解除には次の3つの種類があります。

①約定解除・・・当事者の契約で解除原因を、あらかじめ決めておく
②合意解除・・・当事者双方の意思で契約を解除する
③法定解除・・・債務不履行の場合の解除

法定解除

「法定解除」は、債務不履行の基づき解除する場合をいいます。
債務不履行による解除には、5つの要件があります。

【債務不履行による解除の要件】

1 債務者が、履行期に債務を履行しないこと
2 債権者が相当の期間を定めて履行の催告をすること
3 債務者が相当の期間内に履行しないこと
4 相当の期間経過後における債務不履行が軽微でないこと
5 解除の意思表示をすること

b.債務不履行による解除の要件

解除の要件としては、次のように『相当の期間を定めた催告』が必要な場合と催告が不要な場合があります。

原則 解除するには、『相当の期間を定めた催告』が必要
※債務の不履行が、契約及び取引上の社会通念に照らし軽微であるときは解除できない。
例外 【無催告解除ができる場合】
①債務が「履行不能」の場合
⇒例:売買の目的物である建物が、火事で全部焼失した
②債務者が債務の履行を「拒絶する意思」を「明確」にした場合
⇒例:売主が買主に対して、引渡しを拒絶する意思を書面で強く表示していたor繰り返し表示した
③債務の「一部が履行不能」or
 債務者が「債務の一部の履行を拒絶」し、残部部分のみでは契約の目的を達成できない場合
④特定の日時or一定の期間内において履行しなければ、契約の目的を達成できない場合
⇒例:クリスマスケーキをケーキ屋に注文したが、クリスマスを過ぎてからケーキ屋からクリスマスケーキが届いた
⑤債務者が債務の履行をせず、債権者が催告をしても契約をした目的を達するに足りる履行がされる見込みがないことが明らかな場合
⇒例:注文建築の建物が、建築工事の進捗状況からして、期日までに完成する見込みがない

c.解除権の不可分性

契約の解除は、相手方に対する意思表示によりすることができますが、当事者の一方が複数いる場合には、その全員から又はその全員に対する意思表示が必要です。

つまり、「解除権」には不可分性があります。

解除権の不可分性

d.解除の効果-原状回復義務

当事者の一方が解除権を行使すると、最初からその契約はなかったことになるため、各自が原状に復させる義務が発生します。
このことを「原状回復義務」といいます。

ただし、原状回復義務を理由として、第三者の権利を害することはできません。
(545条1項ただし書)

以上、契約総論Ⅱとして、

01 危険負担
 a.目的物の引渡し前の「危険」を負担するのは?
 b.目的物の引渡し後は?
02 解除
 a.解除の種類
   法定解除
 b.債務不履行による解除の要件
 c.解除権の不可分性
 d.解除の効果-原状回復義務
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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