夫婦Ⅱ-婚姻の解消/協議・裁判離婚,離婚の効果,配偶者死亡

夫婦Ⅱ-婚姻の解消 親族

今回の記事は、『家族法/親族/夫婦Ⅱ』として、

夫婦Ⅱ-婚姻の解消
・・・についてです。

「婚姻の解消原因」には、次のようなものがあります。
婚姻の解消原因 原始的な瑕疵=取消し
(例:不適齢婚・重婚・近親婚・再婚禁止期間の婚姻・詐欺・脅迫)
後発的な原因 死亡  
 
離婚 協議離婚
裁判離婚

この「婚姻の解消原因」の中では、下記の位置付けになります。

01 離婚の成立

「離婚」には、

a.協議離婚
b.裁判離婚

・・・があります。

a.協議離婚

協議離婚-離婚意思の合致+離婚届の提出

夫婦は、協議で離婚することができます。(763条)
そして、「協議離婚」は、

①離婚意思の合致
②離婚届の提出
・・・この2つを合わせて「離婚」が成立します。

重要判例-生活保護受給のための離婚

離婚意思は、法律上の婚姻関係を解消する意思で足りるため、生活保護の受給を継続するための方便としてなされた離婚も有効です。(最判昭57.3.26)

ここは、「婚姻」との大きな違いです。
「婚姻」の場合は「真に夫婦としての生活共同体をつくる実質的意思」が必要です。

b.裁判離婚

夫婦の一方は、ある一定の「離婚原因」があれば、「裁判離婚」が認められます。

【裁判離婚の要件】

1 不貞行為(770条1項1号)
2 悪意の遺棄(770条1項2号)
3 3年以上の生死不明(770条1項3号)
4 回復の見込みのない強度の精神病(770条1項4号)
5 その他、婚姻を継続し難い重大な事由(770条1項5号)

※ただし、裁判所は、1~4に掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、「離婚の請求」を棄却することができます。(770条2項)

家庭内暴力(DV)などは、『5 その他、婚姻を継続し難い重大な事由』に該当する可能性があります。

裁判離婚の手続き

裁判離婚の手続きのながれは、以下のとおりとなり、いきなり「裁判離婚」をすることはできません。

家庭裁判所への申立て
調停離婚(家事257)-まずは、「離婚調停」から始めなければなりません。
審判離婚(家事284)-「調停」で決まらないときは「審判」になります。
裁判離婚(民770)-調停も審判を経ても、決まらないときは「裁判離婚」となります。

有責配偶者からの離婚請求

旧判例では、「有責配偶者」からの「離婚請求」は認められない(最判昭27.2.19等)とされていました。
理由としては、婚姻関係を破綻に陥れた「有責配偶者」について、法は不徳義勝手気ままを許すものではないとしていました。
しかし、客観的に婚姻関係が破綻した場合には、有責配偶者からの離婚請求が一切認められないとすると、長期にわたり婚姻関係が形骸化することとなるが、そのような夫婦に何が期待できるか疑問であるとされ、
【現行判例】
夫婦の別居が相当の長期間に及び、夫婦間の未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの離婚請求を認めている。
(最大判昭62.9.2)
▼更に、
【最判平6.2.8】
昭和62年の最高裁大法廷判決が示した要件の一つである『未成熟の子の不存在』は、絶対的要件ではない旨を判旨しています。
つまり、たとえ「有責配偶者」からの「離婚請求」であっても、特段の事情がない限り、認められています。
 

02 離婚の効果

離婚の効果としては次のようなものがあります。

a.婚姻関係の終了(728条1項)
b.離婚による復氏(767条1項)
c.親権者の決定(819条1項・2項)
d.監護者の決定(766条1項前段)
e.財産分与(768条1項,771条)
 

a.婚姻関係の終了

配偶者との関係で「姻族関係」が終了するのはもちろんこと、配偶者の父母との関係なども「姻族関係」は当然に終了します。(728条1項)

b.離婚による復氏

婚姻によって「氏」を改めた「夫」又は「妻」は、離婚によって「婚姻前の氏」に復することになります。
これを『離婚による復氏』といいます。

離婚後3ヶ月以内の届出により、離婚時に称していた「氏」を称することができる。
(767条2項)
【配偶者が死亡した場合】
「配偶者が死亡」した場合には、逆に、「婚姻により氏を改めた配偶者」は、「復氏」しません。さらに、「姻族関係」も終了しません。

しかし、届出をすることで、「復氏(751条)」することもでき、また、「姻族関係終了」の意思表示により、「亡配偶者の姻族関係」を終了させることもできます。(728条2項)

c.親権者の決定

父母が「協議離婚」をするときは、その協議で、その一方を「親権者」と定めなければなりません。
また、「裁判上の離婚」の場合には、裁判所が父母の一方を親権者と定めます。
(819条1項・2項)

これらは、離婚後に共同して親権を行使するのは、困難であることに配慮したものなので、親権者をどちらかに決めずに、離婚後も「共同で親権を行使する」ことは認められず、必ず、一方を「親権者」と定めなければなりません。

d.監護者の決定

父母が協議上の離婚をするときは、「子の監護」について、必要な事項を、その協議で定めます。
(766条1項前段)

子の監護を定めるときは、『子の利益』を最も優先して考慮しなければなりません。
なお、協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所がこれを定めます。

e.財産分与

離婚した者の一方は、相手方に対し、財産分与を請求することができます。(768条1項,771条)
そして、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうかを、また、分与の額・方法を定めることになります。
(768条3項)

03 離婚と配偶者死亡の比較

「婚姻関係の終了」としては、「離婚による場合」と「配偶者死亡による場合」があります。
この2つの場合の比較まとめ表が次のとおりです。

  離婚 夫婦の一方の死亡
姻族関係 当然に終了する 意思表示により、終了することが可
復 氏 【原則】
婚姻前の「氏」に復氏する
【例外】
離婚後3ヶ月以内に、戸籍法による届出により、離婚の際の「氏」を称することが可

【原則】
復氏しない
例:夫が亡くなったからといって、妻の「氏」が婚姻前の「氏」に復氏しない
【例外】
戸籍法の届出により、婚姻前の「氏」に復することが可

財 産 財産分与する 相続する

>>『b.離婚による復氏』へ戻る

 

【配偶者死亡による婚姻解消】
【原則】
姻族関係は、終了しない
【例外】
生存する配偶者が、姻族関係を終了させる意思表示をしたときに限り、姻族関係が終了する

①姻族関係終了の意思表示ができるのは、「生存配偶者」のみなし得る。
(例えば、亡夫の姻族側が、生存配偶者である妻に対し、姻族関係終了させることは不可)
②「姻族関係終了の意思表示」と「復氏」は無関係。
(なので、復氏せずそのままの「氏」を使っていたとしても、「亡配偶者の姻族関係」を終了させることはできる。)

以上、夫婦Ⅱとして、

01 離婚の成立
 a.協議離婚
   重要判例-生活保護受給のための離婚
 b.裁判離婚
   裁判離婚の手続き
   有責配偶者からの離婚請求
02 離婚の効果
 a.婚姻関係の終了
 b.離婚による復氏
 c.親権者の決定
 d.監護者の決定
 e.財産分与
03 離婚と配偶者死亡の比較
・・・についてでした。お疲れ様でした。
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