今回の記事は、法の下の平等に関する、
01 法の下の平等とは?
02 法の下の平等が及ぶ範囲
性別
・女性の再婚禁止期間(最大判平27.12.16)
社会的身分
・尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)
・国籍法3条1項違憲判決(最大判平20.6.4)
・非嫡出子の相続分違憲決定(最大決平25.9.4)
一票の格差
・衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭51.4.14)
・参議院議員定数不均衡訴訟(最大判平24.10.17)
02 法の下の平等が及ぶ範囲
性別
・女性の再婚禁止期間(最大判平27.12.16)
社会的身分
・尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)
・国籍法3条1項違憲判決(最大判平20.6.4)
・非嫡出子の相続分違憲決定(最大決平25.9.4)
一票の格差
・衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭51.4.14)
・参議院議員定数不均衡訴訟(最大判平24.10.17)
・・・についての記事です。
01 法の下の平等とは?
憲法14条1項
すべて国民は、法の下の平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的経済的又は社会的関係において、差別されない。
すべて国民は、法の下の平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的経済的又は社会的関係において、差別されない。
と規定されています。そして、2項では貴族制度の廃止、3項では栄典に伴う特権の禁止を規定し、平等原則の徹底化を図っています。
「法の下」の意味については、法を平等に適用しなければならないことだけではなく、法の内容じたいも平等でなければならないことも含まれます。
「平等」の意味は、事実上の違いを無視した「絶対的平等」ではなく、差別すべき合理的な理由をもとに、結果として平等になるという「相対的平等」という意味を持っています。
「法の下」の意味については、法を平等に適用しなければならないことだけではなく、法の内容じたいも平等でなければならないことも含まれます。
「平等」の意味は、事実上の違いを無視した「絶対的平等」ではなく、差別すべき合理的な理由をもとに、結果として平等になるという「相対的平等」という意味を持っています。
02 法の下の平等が及ぶ範囲
憲法14条1項に列挙されている人種・信条・性別・社会的身分・門地以外にも、法の下の平等の保障は及びます。
ここでは、
・性別
・社会的身分
・一票の格差
・社会的身分
・一票の格差
・・・についての、判例をあげています。
性別
女性の再婚禁止期間(最大判平27.12.16)
【事案】
女性についてのみ「6ヶ月の再婚禁止期間」を設けている民法733条1項の規定が憲法14条1項に違反しないかが争われた。
女性についてのみ「6ヶ月の再婚禁止期間」を設けている民法733条1項の規定が憲法14条1項に違反しないかが争われた。
【結論】
民法733条1項のうち、
・100日の再婚禁止期間を設ける部分は合憲
・100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は違憲
民法733条1項のうち、
・100日の再婚禁止期間を設ける部分は合憲
・100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は違憲
【判旨】
『100日の再婚禁止期間を設ける部分について』
父性の推定の重複を避けるため100日について一律に女性の再婚を制約することは、婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく、立法目的との関連において、合理性を有する。
『100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分について』
厳密に父性の推定が重複することはを回避するための期間を超えて婚姻を禁止する期間を設けることを正当化することは困難である。
他にこれを正当化し得る根拠を見出すこともできないことからすれば、民法733条1項のうち100日超過部分は、合理性を欠いた過剰な制約を課すものとなっている。
『100日の再婚禁止期間を設ける部分について』
父性の推定の重複を避けるため100日について一律に女性の再婚を制約することは、婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく、立法目的との関連において、合理性を有する。
『100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分について』
厳密に父性の推定が重複することはを回避するための期間を超えて婚姻を禁止する期間を設けることを正当化することは困難である。
他にこれを正当化し得る根拠を見出すこともできないことからすれば、民法733条1項のうち100日超過部分は、合理性を欠いた過剰な制約を課すものとなっている。
社会的身分
尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)
【事案】
父親を殺害した子が、普通殺人罪よりも刑の重い「刑法200条 尊属殺人罪」で起訴された。
このことが、憲法14条1項に違反していないかが、争われた。
※刑法200条 尊属殺人罪は、平成7年の改正により削除されました。
父親を殺害した子が、普通殺人罪よりも刑の重い「刑法200条 尊属殺人罪」で起訴された。
このことが、憲法14条1項に違反していないかが、争われた。
※刑法200条 尊属殺人罪は、平成7年の改正により削除されました。
【結論】
違憲
違憲
【判旨】
『立法目的の合理性』
被害者が尊属であることを犯情の一つとして、刑の加重要件とする規定を設けても、かかる差別的取扱いをもって、直ちに合理的な根拠を欠くものとは断ずることはできない。
(※尊属殺人罪を設けること自体は、合憲ということです。)
『立法目的達成手段の合理性』
刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のために必要な限度をはるかに超えていて、普通殺人に関する刑法199条の法定刑に比べて著しく不合理な差別的取扱いであるので、憲法14条1項に違反して無効である。
『立法目的の合理性』
被害者が尊属であることを犯情の一つとして、刑の加重要件とする規定を設けても、かかる差別的取扱いをもって、直ちに合理的な根拠を欠くものとは断ずることはできない。
(※尊属殺人罪を設けること自体は、合憲ということです。)
『立法目的達成手段の合理性』
刑法200条は、尊属殺の法定刑を死刑又は無期懲役刑のみに限っている点において、その立法目的達成のために必要な限度をはるかに超えていて、普通殺人に関する刑法199条の法定刑に比べて著しく不合理な差別的取扱いであるので、憲法14条1項に違反して無効である。
国籍法3条1項違憲判決(最大判平20.6.4)
【事案】
日本人である父と外国人である母の間に生まれた非嫡出子が、日本国籍取得届を提出したが、国籍法の『父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した者に限り日本国籍の取得を認める』という規定により、日本国籍取得が認められなかった。
このことで、『父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した者に限り日本国籍の取得を認める』ことは、憲法14条1項に違反しないかが、争われた。
※国籍法3条1項は、現在は改正されています。
日本人である父と外国人である母の間に生まれた非嫡出子が、日本国籍取得届を提出したが、国籍法の『父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した者に限り日本国籍の取得を認める』という規定により、日本国籍取得が認められなかった。
このことで、『父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した者に限り日本国籍の取得を認める』ことは、憲法14条1項に違反しないかが、争われた。
※国籍法3条1項は、現在は改正されています。
【結論】
違憲
違憲
【判旨】
(旧)国籍法3条1項の規定により、日本人の父から出生後に認知された非嫡出子のみが、日本国籍取得について、著しい差別的取扱いを受けている。
(旧)国籍法3条1項の規定は、合理性を欠いた過剰な要件を課すものとなっており、憲法14条1項に違反する。
(旧)国籍法3条1項の規定により、日本人の父から出生後に認知された非嫡出子のみが、日本国籍取得について、著しい差別的取扱いを受けている。
(旧)国籍法3条1項の規定は、合理性を欠いた過剰な要件を課すものとなっており、憲法14条1項に違反する。
ちなみに、男性側は、すでに日本人女性と婚姻していたので、この外国人女性と婚姻することありませんでした。
非嫡出子の相続分違憲決定(最大決平25.9.4)
【事案】
非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする(旧)民法900条4号但書前段は、憲法14条1項に違反しないかが争われた。
非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする(旧)民法900条4号但書前段は、憲法14条1項に違反しないかが争われた。
【結論】
違憲
違憲
【決旨】
遅くとも本件の相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきであり、民法900条4号但書前段は、憲法14条1項に違反する。
遅くとも本件の相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきであり、民法900条4号但書前段は、憲法14条1項に違反する。
現在は、民法900は法改正され、嫡出子と非嫡出子の法定相続分は、同じになりました。
一票の格差
衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭51.4.14)
【事案】
昭和47年に行われた衆議院議員選挙について、千葉一区の有権者が、一票の格差が最大4.99対1に広がっていることが、投票価値の平等に反し憲法14条に違反するとして、選挙無効の訴えを提起した。
昭和47年に行われた衆議院議員選挙について、千葉一区の有権者が、一票の格差が最大4.99対1に広がっていることが、投票価値の平等に反し憲法14条に違反するとして、選挙無効の訴えを提起した。
【結論】
違憲だが、選挙は有効である。
違憲だが、選挙は有効である。
【判旨】
『投票価値の平等』
憲法14条1項に定める法の下の平等は、各選挙人の投票の価値、すなわち各投票が選挙の結果に及ぼす影響力においても平等であることを含む。
『議員定数配分規定の合憲性』
投票価値の不平等が明らかに合理性を欠くに至り、かつ合理的期間内にそれが是正されない場合は違憲となる。
最大格差が5対1となり、それが約8年間是正されなかった公職選挙法の議員定数配分規定は、全体として違憲である。
『選挙の有効性』
行政事件訴訟法31条1項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却する。
※つまり、違憲だけど、選挙じたいは有効とされました。
『投票価値の平等』
憲法14条1項に定める法の下の平等は、各選挙人の投票の価値、すなわち各投票が選挙の結果に及ぼす影響力においても平等であることを含む。
『議員定数配分規定の合憲性』
投票価値の不平等が明らかに合理性を欠くに至り、かつ合理的期間内にそれが是正されない場合は違憲となる。
最大格差が5対1となり、それが約8年間是正されなかった公職選挙法の議員定数配分規定は、全体として違憲である。
『選挙の有効性』
行政事件訴訟法31条1項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却する。
※つまり、違憲だけど、選挙じたいは有効とされました。
参議院議員定数不均衡訴訟(最大判平24.10.17)
【事案】
平成22年に行われた参議院議員通常選挙について、一票の格差が最大5.00対1に広がっていることが投票価値の平等に反し憲法14条に違反するとして、選挙無効の訴えを提起した。
平成22年に行われた参議院議員通常選挙について、一票の格差が最大5.00対1に広がっていることが投票価値の平等に反し憲法14条に違反するとして、選挙無効の訴えを提起した。
【結論】
合憲(違憲状態では、ある)
合憲(違憲状態では、ある)
【判旨】
参議院は衆議院とともに、国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っていることは明らかであって、参議院議員選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難い。
参議院は衆議院とともに、国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っていることは明らかであって、参議院議員選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難い。
一票の格差についてのポイント
①一票の格差が合理性を欠く →更に、合理的期間内に、法改正がなされなかった |
公職選挙法は違憲 |
②一票の格差が合理性を欠くが、 →合理的期間内に、法改正がされていた |
公職選挙法は違憲状態 |
③一票の格差が合理性を欠いていない | 公職選挙法は合憲 |
以上、法の下の平等についての、
01 法の下の平等とは?
02 法の下の平等が及ぶ範囲
性別
・女性の再婚禁止期間(最大判平27.12.16)
社会的身分
・尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)
・国籍法3条1項違憲判決(最大判平20.6.4)
・非嫡出子の相続分違憲決定(最大決平25.9.4)
一票の格差
・衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭51.4.14)
・参議院議員定数不均衡訴訟(最大判平24.10.17)
02 法の下の平等が及ぶ範囲
性別
・女性の再婚禁止期間(最大判平27.12.16)
社会的身分
・尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48.4.4)
・国籍法3条1項違憲判決(最大判平20.6.4)
・非嫡出子の相続分違憲決定(最大決平25.9.4)
一票の格差
・衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭51.4.14)
・参議院議員定数不均衡訴訟(最大判平24.10.17)
・・・でした。お疲れ様でした。