代理Ⅰ 法定代理・任意代理,自己契約・双方代理,代理権の濫用,代理権の消滅,復代理

民法/総則 代理Ⅰ 代理

民法では、法律行為を自分の代わりに契約をしてきてもらうというような「代理制度」があります。
この「代理」については、3つのパートに分けて解説しています。

・代理Ⅱ 代理行為の瑕疵・無権代理
・代理Ⅲ 表見代理


今回の記事は、代理Ⅰとして、

00 代理とは?
01 代理の成立要件
02 法定代理・任意代理
03 自己契約・双方代理の禁止
04 代理権の濫用
05 代理権の消滅
06 復代理
・・・についてです。

00 代理とは?

代理とは、法律行為を自分の代わりに契約をしてきてもらうことをいいます。

例えば、東京在住のAが、大阪の土地を買いたいと思ったときに、自分で見に行く時間がないので、誰か代理をたてて、大阪の土地の売買契約をしてきてもらうというような場合です。

そして、その効果は本人に帰属させるのが「代理制度」です。

代理人には、「行為能力」は不要ですが、「意思能力」は必要です。

『権利能力・意思能力・行為能力』について詳しくはこちらのリンクからどうぞ▼

01 代理の成立要件

代理制度-①代理権授与②顕名③代理行為④本人への効果帰属
①代理権授与
本人から代理人へ、「代理権の授与」行為があること
②顕名
代理人から相手方へ「顕名」すること
(※例:私は、Aの代理人Bです。)
③代理行為
代理権の範囲内で、「代理行為」が行われること
・・・この3つの要件が成立して、
④本人への効果帰属
本人と相手方との契約が成立します。

02 代理の種類

任意代理(例:弁護士)法定代理(例:未成年者の親権者)

代理には、次の2つの種類があります。

任意代理 ・本人が、他人に代理権を与えることによって始まります。
・代理権の範囲は、本人が決めた内容となります。
法定代理 ・法律で定められた代理権が自動的に与えられます。
(例:未成年者の親権者が法定代理人)

a.代理権の範囲

代理には、「任意代理」と「法定代理」がありますが、それぞれに代理権の範囲は違います。

【任意代理】例:弁護士
任意代理の場合は、代理権を授与する契約によって、代理権の範囲も決められます。
【法定代理】例:未成年者にとっての親権者
法定代理の場合の代理権の範囲は次の3つです。
・保存行為
・利用行為
・改良行為

詳しくは下記の外部リンクからどうぞ
『代理人による「保存行為」の例-イラスト図解』
『代理人による「利用行為」の例-イラスト図解』
『代理人による「改良行為」の例-イラスト図解』

03 自己契約・双方代理の禁止

【自己契約】
自己契約とは、例えば、本人Aが自分の土地を売る代理人としてBに代理権を授与しましたが、そのB自身が土地の買主となるというように、代理人である者が当事者になることをいいます。

これは、本人の利益を害する恐れがあるので「自己契約」は禁止とされています。
代理-自己契約の禁止

【双方代理】
双方代理とは、例えば、本人Aと相手方Cの双方の代理人をBがなることをいいます。

《事例》
本人Aが自分の土地を売る代理人としてBに代理権を授与しましたが、実は、Bは、Cからも「土地を買う」代理権を授与されていました。

本人と相手方の双方の代理人となった場合、どちらかの利益を害する恐れがあるので、原則として、「双方代理」は禁止とされています。
双方代理の禁止

a.自己契約・双方代理禁止違反は無権代理

仮に、「自己契約の禁止」や「双方代理の禁止」に違反した場合には、たとえ、代理権の範囲内の契約であっても、「無権代理」となります。

無権代理について、詳しくはこちらからどうぞ▼

b.自己契約の禁止と双方代理の禁止の例外

自己契約と双方代理は、原則として禁止されていますが、次の場合には有効に代理することが認められます。

1 元々あった債務の履行に過ぎない場合
(例:売買契約後に、登記手続きを同じ司法書士が双方の代理人となってする)
本人があらかじめ許諾していた行為

04 代理権の濫用

代理権の濫用(らんよう)とは、代理人が、代理権の範囲内で代理行為をしたものの、実は、代理権を悪用して私腹を肥やそうとした場合のことです。

【原則】
代理権の濫用による契約は、一応代理権の範囲内の行為ですから、原則、有効です。

【例外】
相手方が、代理人の目的について悪意又は善意有過失(知ることができたはず)の場合には、無権代理行為とみなされます。
代理権の濫用-代理権の範囲なので、原則として有効
代理権の濫用-相手方が悪意又は有過失の場合は、無権代理行為となる
代理人Bが、代理権の範囲内で権利の濫用をした場合に、相手方Cが悪意又は有過失のときは、代理人の行為は無権代理行為となりますので、本人Aは、Cに土地の引渡しをしなくてもいいことになります。

05 代理権の消滅

>>『代理権の消滅』については、こちらのリンクへどうぞ。

06 復代理

法律行為の代理人が、病気やケガなどの不測の事態に陥ってしまった場合に、代理人がさらに選んだ代理人のことを「復代理」といいます。

復代理

任意代理と法定代理の「復代理人」に関する比較について、くわしくはこちらのリンクからどうぞ▼

以上、「代理」についての、

00 代理とは?
01 代理の成立要件
02 代理の種類
 a.代理権の範囲
03 自己契約・双方代理の禁止
 a.自己契約・双方代理禁止違反は無権代理
 b.自己契約の禁止と双方代理の禁止の例外
04 代理権の濫用
05 代理権の消滅
06 復代理
・・・でした。お疲れ様でした。
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