今回の記事は、抵当権Ⅲとして、
法定地上権が不成立の場合の土地建物の一括競売イラスト図解
02 抵当権と賃借権
03 建物明渡し猶予制度
01 土地と建物の一括競売
更地(建物が建っていない土地)に抵当権を設定した後、築造された建物には法定地上権が成立しません。
『更地に抵当権が設定された後、建物が建てられた場合→法定地上権は成立しない』について詳しく知りたい方はこちらから >>『更地に抵当権設定後に築造された建物→法定地上権不成立』
しかし、法定地上権が成立しないとはいえ、建物が建っている場合に、土地の抵当権者としては、「土地のみの競売」が、し辛いです。
法定地上権が成立しないので、競売で土地を買い受けた人は、建物の住人に退去を求めることができますが、退去を求める裁判費用がかかったり、時間がかかったりと、何かとわずらわしいです。
そんな面倒くさい土地だということで、買受人は二の足を踏んでしまい、ひいては土地の抵当権の価値も下がってしまいます。
そこで、そんな土地の抵当権者のために、土地に抵当権の設定後その抵当地に建物が築造されたときには、抵当権者は土地と共に、その建物を競売することができます。
(これを、土地と建物の一括競売といいます。
法定地上権が不成立の場合の土地建物の一括競売イラスト図解
(この場合、新しく築造された建物には、法定地上権は成立しません。)
このとき、Aは「法定地上権が成立しない建物」も土地と共に、一括競売することができます。
土地の抵当権者Aは、「土地と建物の競売代金」のうち、「土地に関する競売代金」からのみ、優先回収することができます。
このように、土地(更地)に抵当権の設定後、その抵当地に建物が築造されたときには、土地の抵当権者は、土地と共に、その建物を一括競売することができます。
ただし、抵当権は土地にしか設定されていないので、優先回収を受けることができるのは、あくまでも、「土地の競売代金」からのみです。
>>『法定地上権/抵当権者が複数いる場合の法定地上権の成立』へ戻る
02 抵当権と賃借権
抵当権が設定され登記している土地や建物(抵当不動産)でも、誰かに賃借することができます。
しかし、たとえば「抵当建物」を賃借していた賃借人は、抵当権が実行されると、退去しなければなりません。
これでは、借り手がいなくなってしまうし、賃借人にとっても酷な場合が出てきます。
そこで、民法では『抵当権者の同意による賃貸借の対抗制度』を設けています。
具体的には、登記をした賃貸借は、その前に登記された抵当権者全員の同意を得て、『抵当権者の同意の登記』をすれば、その同意をした抵当権者に対抗することができます。
平たく言えば、賃借人は、同意をした抵当権が実行されて競売で所有者が変わっても、そのまま賃借権を行使して、賃借し続けることができるということです。
実はこれは、抵当権者側としてもメリットはあります。家賃収入などが入ってくるわけですから、目的不動産の価値も上がり、ひいては抵当権の価値も上がりますから。
上記のことを正式に『賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記』といいますが、このことについてもう少し詳しく知りたい方は、下記の外部リンクへどうぞ▼
03 建物明渡し猶予制度
「抵当権が設定されている建物」に賃借して住んでいる人は、抵当権が実行されると、その建物賃借人は、建物からの退去(建物明渡し)を迫られます。
しかし、これでは、建物賃借人からすれば、安心して住むことができません。
そこで、民法では、『建物明渡し猶予制度』が設けられています。
・抵当建物使用者(抵当建物の賃借人)は、その抵当建物の買受人が競売によって買い受けた時から6ヶ月を経過するまでは、明渡しを猶予されます。
・ただし、その建物の使用したことの対価を支払う必要があります。
以上、抵当権Ⅲとして、
法定地上権が不成立の場合の土地建物の一括競売イラスト図解
02 抵当権と賃借権
03 建物明渡し猶予制度