夫婦Ⅰ-婚姻/婚姻の成立・婚姻の取消・効果・内縁

民法/家族法/親族/婚姻Ⅰ 親族

民法で定められている「親族法」の中で「親族の範囲」としては、

①6親等内の血族
②配偶者
③3親等内の姻族
・・・としています。


そして今回の記事は、『家族法/親族/夫婦Ⅰ』として、

夫婦Ⅰ-婚姻

・・・についての記事です。

「民法」の中の位置づけとしては、下記のとおりです。

01 婚姻の成立

婚姻の成立-婚姻意思の合致+婚姻届出の提出

婚姻(法律上の夫婦関係)は、

①婚姻意思の合致
②婚姻届出の提出
・・・この2つを合わせて「婚姻」が成立します。
婚姻意思の意味 真に夫婦としての生活共同体をつくる実質的意思であり、当事者の意思の合致がなくてはならない。

※1 自分の子どもに日本国籍を取得させるためだけに婚姻する場合は、婚姻意思があるとはいえない。(最判昭44.10.31)
※2 自分の子どもに「嫡出子」の身分を与えるためだけに婚姻する場合は、実質的婚姻意思を欠き、無効である。
婚姻意思は無い場合 婚姻は無効(742条)

a.民法改正

【平成30年 民法改正】
女性の婚姻適齢が、16歳から18歳に引き上げられました。
したがって、男女ともに、18歳に達していなければ婚姻することはできません。

【平成28年 民法改正】
女性の再婚禁止期間は、6ヶ月から100日に、短縮されました。

02 婚姻の取消(婚姻障害)

婚姻意思の合致と届出があっても、一定の場合には、婚姻の取消原因となります。(婚姻障害)

【婚姻障害(婚姻の取消原因)】

婚姻適齢(731条) 婚姻は男女ともに18歳に達していなければならない。
→女性は、平30年改正により16歳から18歳に引き上げられました。
重婚禁止(732条) 配偶者のある者は、重ねて婚姻することができない。
再婚禁止期間(733条1項) 女が再婚するには婚姻解消又は取消の日から100日経過後でなければならない。
近親婚の禁止(734条1項) 直系血族又は3親等内の傍系血族間では婚姻できない。
直系姻族間の婚姻禁止(735条) 直系姻族間では、婚姻できない。
(姻族関係終了後も同様)
養親子関係間の婚姻禁止(736条) 養子,その配偶者,直系卑属,その配偶者と養親,その直系尊属との間では婚姻できない。

a.婚姻適齢(731条)

婚姻は18歳に達していなければ、することができません。
→女性は、平30年改正により16歳から18歳に引き上げられました。

婚姻適齢(731条)-婚姻は18歳に達していなければならない。

b.重婚禁止(732条)

配偶者のある者は、重ねて婚姻することはできません。

重婚禁止(732条)-配偶者のある者は重ねて婚姻することはできない。

c.再婚禁止期間(733条1項)

女性が再婚するには婚姻解消又は取消の日から100日経過後でなければなりません。
→平28年民法改正により、女性の再婚禁止期間は、6ヶ月から100日に、短縮されました。

再婚禁止期間-女性が再婚するには婚姻解消又は取消の日から100日経過後

d.近親婚の禁止(734条1項)

「直系血族」又は「3親等内の傍系血族間」では婚姻できません。

【例】「本人」を中心と見て、✖印の者とは婚姻できません。

近親婚の禁止(734条1項)-直系血族又は3親等内の傍系血族間では婚姻できない。

※「4親等の傍系血族」である『④いとこ』とは、婚姻できます。

e.直系姻族間の婚姻禁止(735条)

直系「姻族間」では、婚姻できません。たとえ、姻族関係終了後でも同様です。

【例】AとBは婚姻していましたが、夫Aは亡くなりました。
「B」と「Aの父C」は婚姻できません。
かつては、直系の親子関係の位置づけだったからです。
直系姻族間の婚姻禁止(735条)-直系「姻族間」では、婚姻できない。

f.養親子関係間の婚姻禁止(736条)

養子,その配偶者,直系卑属,その配偶者と養親,その直系尊属との間では婚姻できません。

【養親子関係間の婚姻禁止の例】
AとBは夫婦で、Cを養子としていました。
妻Bが亡くなったとしても、Bは養子Cとは、婚姻できません。
かつては、直系の親子関係だったからです。
養親子関係間の婚姻禁止(736条)-養子,その配偶者,直系卑属,その配偶者と養親,その直系尊属との間では婚姻できない

03 婚姻の効果

婚姻が成立すると、身分上・財産上にいろいろな変化が生じます。

a.身分上の効果
b.財産上の効果

a.身分上の効力

婚姻の身分上の効力には、以下のようなものがあります。

夫婦同氏(750条) 夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の「氏」を称する
同居・協力・扶養義務(752条) 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない
夫婦間の契約取消権(754条) 夫婦間でした契約は、婚姻中いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる

「夫婦間の契約取消権」について、まだ離婚はしていなくとも、婚姻が実質的に破綻していた場合には、夫婦間の契約取消権は認められないという判例があります。
(最判昭42.2.2)

これは例えば、離婚したい夫が妻に対し「離婚してくれるならこの家を譲る」と契約したのに、いざ離婚が成立してみると、「家は譲らない。婚姻中の夫婦間契約は取り消せるからな!」みたいな状況のときに、「実質的に婚姻が破綻していたのだから、取消権は認められない。家は妻へ渡せ!」というようなケースです。

【法改正による変更】
・旧法では『20歳で成人』でしたが、法改正により『18歳で成人』となりました
・旧法では『男 18歳で婚姻できる』『女 16歳で婚姻できる』とされていましたので、『成人が20歳』ということと合わせて、” 未成年者の婚姻もあり得た ” わけです。

ところが、民法改正により、『18歳で成人』『男女ともに18歳が婚姻適齢』となったので、” 未成年者の婚姻は認められなくなった ” わけです。

” 未成年者の婚姻は認められなくなった ”ことにより、『成年擬制』の規定は削除されました。

b.財産上の効力

婚姻の財産上の効力には、以下のようなものがあります。

夫婦別財産(762条1項) ①夫婦の一方が婚姻前から有する財産
②婚姻中に夫名義で得た給料は夫の財産

※夫婦どちらのものか不明な財産は、夫婦共有財産と推定されます
婚姻費用の分担(760条) 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

※なお、婚姻関係が実質的に破綻し、夫婦が別居するに至った場合でも、婚姻費用は分担しなければならない(大阪高決昭41.5.9)
日常家事債務(761条) 夫婦の一方が「日常の家事」に関して第三者と契約をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。

※ただし、第三者に対して責任を負わない旨を予告した場合、一方は責任を負わない。

04 内縁

「内縁」とは、婚姻意思はあっても、婚姻届を提出していない場合の男女のことをいいます。

法律上は「夫婦」ではないので、民法の婚姻の規定は適用されませんが、判例では「内縁夫婦」に一部の規定を適用しています。

日本では、まだまだ「法律婚」が優先されますが、「事実婚」に対してもできる限り「内縁配偶者」を保護する考えです。

準用される規定(主なもののみ) 準用されない規定
①同居・協力・扶助の義務(752条) ①婚姻関係の発生(725条3号)
②婚姻費用分担義務(760条) ②夫婦同氏の原則(750条)
③日常家事債務の連帯責任(761条) ③子の嫡出性(772条)
④離婚の際の財産分与の規定(768条) ④配偶者の相続権(890条)
  ⑤夫婦間の契約取消権(754条)

一方の死亡により、内縁関係の解消の場合には、「財産分与」の規定を準用することはできません。(最判平12.3.10)
これは、内縁配偶者には、「相続権」が認められないので、死亡による「財産分与」も認められないということです。

以上、夫婦Ⅰ-婚姻について、

01 婚姻の成立
 a.民法改正
02 婚姻の取消(婚姻障害)
 a.婚姻適齢(731条)
 b.重婚禁止(732条)
 c.再婚禁止期間(733条1項)
 d.近親婚の禁止(734条1項)
 e.直系姻族間の婚姻禁止(735条)
 f.養親子関係間の婚姻禁止(736条)
03 婚姻の効果
 a.身分上の効力
 b.財産上の効力
04 内縁
・・・でした。お疲れ様でした。
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