多数当事者の債権債務Ⅰ-分割債務・連帯債務,不可分債務

多数当事者の債権債務Ⅰ 分割債務・連帯債務,不可分債務 多数当事者の債権債務関係

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多数当事者の債権債務の関係には、

①分割債務
②連帯債務
③不可分債務
④保証債務

・・・があります。

今回の記事は、多数当事者の債権債務Ⅰとして、分割債務・連帯債務・不可分債務についてを解説しています。

01 分割債務

「多数当事者の債権債務関係」の中で、「分割債務」に関しては、出題可能性は低いです。
次の「02 連帯債務」のほうが重要な位置づけです。
ただ、「連帯債務」を理解しやすくするために、この「分割債務」を軽く確認しておいて下さい。
たとえば、A・B・Cの3人が、Xから300万円の車を共同で購入した場合に、原則的には『各自100万円ずつの債務』を負うことになります。

このような『各自100万円ずつの債務』のことを「分割債務」といいます。
【分割債務の事例】
1️⃣A・B・Cの3人が共同で、Xから300万円の車を購入しました。
この場合に、A・B・Cはそれぞれ100万円ずつの債務を負うことになります。
A・B・Cの3人が共同で、Xから300万円の車を購入しました。
この場合に、A・B・Cはそれぞれ100万円ずつの債務を負うことになります。
2️⃣債権者Xは、仮にBとCが支払いしなかった場合でも、残ったAに対しては、100万円のみ請求できるに過ぎません。
A・B・Cは各自100万円ずつの分割債務しか負っていないからです。
債権者Xは、仮にBとCが支払いしなかった場合でも、残ったAに対しては、100万円のみ請求できるに過ぎません。

このように「分割債務」では、債権者にとっては、不利益になってしまう可能性があります。

なので、債権者がより確実に債権を回収できるよう「連帯債務」の制度が設けられています。
そして、次の「連帯債務」のほうが、試験出題としても重要です。

02 連帯債務

「連帯債務」は、数人の債務者が、同一内容の給付について、各一人一人が独立に ” 全部の給付をするべき債務 ” を負っています。

先程の「分割債務」では『A・B・C3人は、それぞれ100万円ずつの債務を負う』でしたが、
この「連帯債務」では『A・B・C3人は、それぞれ300万円全額の債務を負う』ことになります。

なので逆に、仮に、数人の債務者の内の一人が全部の債務の給付をすれば、他の債務者の債務もすべて消滅します。

1️⃣債務者A・B・Cは、3人で連帯して、Xから300万円を借り入れ、その際に3人の債務は連帯債務(負担部分は平等)とする特約がされました。
債権者Xは、A・B・Cの内の一人に対して、300万円全額を請求することができます。

・債務者Aの債務:300万円 / Aの負担部分:100万円
・債務者Bの債務:300万円 / Bの負担部分:100万円
・債務者Cの債務:300万円 / Cの負担部分:100万円
2️⃣債権者Xは、仮にBとCが支払いしなかった場合には、残ったAに対して、300万円全額を請求することができます。
A・B・Cは、それぞれが300万円全額の債務を負っているからです。
債権者Xは、仮にBとCが支払いしなかった場合には、残ったAに対して、300万円全額を請求することができます。
A・B・Cは、それぞれが300万円全額の債務を負っているからです。

>>『債権/契約以外の債権発生原因Ⅱ/特殊的不法行為/共同不法行為』へ戻る

a.負担部分と求償権

数人で「連帯債務」を負うときには、各債務者が最終的に「負担する部分」があります。
上記の例でいうと、3人で300万円の連帯債務を負うときに、負担部分が平等とされていたのなら、3人それぞれの負担部分は、100万円ずつとなります。

そして、全額を弁済した債務者は、他の債務者に対して負担部分に応じて「求償」することができます。

上記の例で、連帯債務Aだけが、債権者Xに対し、300万円全額を返済しました。
そして、3人それぞれの負担部分は、100万円ずつなので、Aは、BとCに対して、100万円ずつ「求償」できます。

・Aは、Bに対して→100万円求償できる
・Aは、Cに対して→100万円求償できる
連帯債務者の負担部分と求償権
全額弁済した債務者は、他の債務者に対し、負担部分を求償できる

b.連帯債務者の1人に生じた事由の効力

連帯債務-相対効・絶対効

連帯債務者の1人に生じた事由は、他の連帯債務者には影響しないのが原則です。(相対効の原則)
しかし、ある一定の場合には、例外的に『絶対的効力』が生じます。

相対効
(441条)
履行の請求
例:債権者Xが債務者Aにだけ、裁判上で請求を提訴した
 →XとAの間でのみ、「時効の完成猶予」となります。
承認
例:債務者Aだけが、債権者に対して債務の承認をした
 →XとAの間でのみ、「時効の更新」事由となります。
免除
例:債権者が、債務者Aにだけ、債務の免除(返済しなくていい)とした
 →債務者Aの債務だけが、消滅します。
時効の完成
例:債務者Aだけが、消滅時効が完成した
 →債務者Aの債務だけが、消滅します。
絶対効
(438条~440条)
弁済・代物弁済
例:債務者Aが、債権者に弁済した
 →Aだけでなく、他の債務者B・Cの債務も消滅します。
混同
例:債務者Aが亡くなって、債権者XがAを相続した
 →Aだけでなく、他の債務者B・Cの債務も消滅します。
更改
例:債務者Aの債務を消滅させ、Aの車の引渡し債務を発生させる契約をした
 →Aだけでなく、他の債務者B・Cの債務も消滅します。
相殺
例:債務者Bが債権者に対し債権を持っている場合

【相殺当事者が相殺を援用した場合】
相殺した分、全員債務を免れます。

【相殺当事者が援用しない場合】
他の債務者は、その連帯債務者(援用権者)の負担部分の限度で、債権者に対して履行を拒むことができますが、相殺権を援用することはできません。

援用権者である債務者が相殺を援用しない間は、その負担部分の限度において、他の連帯債務者は債権者に対して「債務の履行を拒む」ことができます。

これまでは、他の連帯債務も相殺の援用ができたのですが、民法改正がありました。
他人の権利を援用するとか、「他人の権利をいじるのはダメだよ」というベクトルに向いた改正となりました。

連帯債務の絶対効ゴロ合わせ

連帯債務の絶対効ゴロ合わせ

連帯債務の絶対効は、弁済 混同 更改 相殺 です。
覚え方としては、「ベーコン買いそう!」です。

【連帯債務の絶対効ゴロ合わせ】
弁済 混同 更改 相殺
べー コン 買い そう!
 
弁済 混同 更改 相殺
例:
債務者Aが、債権者に弁済した
例:
債務者Aが亡くなって、債権者XがAを相続した
例:
債務者Aの債務を消滅させ、Aの車の引渡し債務を発生させる契約をした
例:
債務者Bが債権者に対し債権を持っている場合
Aだけでなく、他の債務者B・Cの債務も消滅します。 Aだけでなく、他の債務者B・Cの債務も消滅します。 Aだけでなく、他の債務者B・Cの債務も消滅します。 【相殺当事者が相殺を援用した場合】
相殺した分、全員債務を免れます。

【相殺当事者が援用しない場合】
他の債務者は、その連帯債務者(援用権者)の負担部分の限度で、債権者に対して履行を拒むことができますが、相殺権を援用することはできません。

03 不可分債務

「不可分債務」とは、そのまんま「分けることができない債務」のことです。
逆に、『金銭債務』のように「分けることができる債務」は「可分債務」です。

不可分債務の例としては、

・共有物(例:3人で共有している1台の車)の引渡し債務
・共同して賃借している不動産の賃料支払債務
この場合には、1人に対し、又は同時に・順次に、すべての債務者に対して履行を請求することができます。(430条,436条)

「不可分債務」については、外部リンク『司法書士ブログ/民法・債権/不可分債務』へどうぞ▼

以上、多数当事者の債権債務Ⅰとして、

01 分割債務
02 連帯債務
 a.負担部分と求償権
 b.連帯債務者の1人に生じた事由の効力
   連帯債務の絶対効ゴロ合わせ
03 不可分債務
・・・についてでした。お疲れ様でした。

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